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1/8・1/15
出資を受けると何が変わるか
この回で分かるようになること
- 株を渡すと、会社の決定に何が起きるかを言える
- 株主総会と取締役会が、それぞれ何を決める場かを言える
- 出資を受けたあとの持ち分を、自分で計算できる
この回で覚えるのは2つだけ
- 1株で1票
- 全体が増えると、自分の株数が同じでも割合は下がる
この2つだけです。 条文の番号も、決議の名前も、必要になったときに調べれば足ります。
この回には、割り算がたくさん出てきます。 どれも小学校で習ったものです。難しいのは計算ではなく、何を何で割るのかを決めるところです。 そこを、順番に見ていきます。
計算に出てくる金額と株数は、すべて架空です。 やり方を見せるための数字で、実際の相場ではありません。
前の回の続き
前の回で、出資を受けるということは会社の一部を渡すことだと見ました。
渡した先で何が起きるのか。 この回で、そこを見ます。
前の回で名前だけ出した議決権が、この回の中心です。 配当も、残余財産の分配も、もうけが出たときとたたむときの話でした。議決権だけが、出してもらった日から効きます。
この回でやることは2つです。 議決権が誰にどれだけあるかを見ること。そして、出資を受けたあとの持ち分を、自分たちの企画の数字で計算してみることです。
1株で1票
会社法第308条にこう書いてあります。
株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。
1株で1票です。 株を多く持っている人ほど、票が多くなります。
だから、何株を誰が持っているかが、そのまま決定権の分かれ方になります。
株数と持ち分は、同じことを別の言い方で言っています
1株1票には、例外もあります。 同じ第308条に、まとまった株数(単元)を定款で決めている場合は、1単元で1票になる、という但し書きがあります。会社が自分で持っている株には票がない、という定めもあります。この授業で出てくる場面はありません。 「例外がある」ということだけ、頭の隅に置いておいてください。
決めるのに必要な票の数
決めることによって、必要な票の数が変わります。会社法第309条が2段階で定めています。
「大事な決定」に当たるものは、条文に並んでいます。会社の形を変えること、新しく株を出すこと、役員を辞めさせることなど。
全体が100株でない場合も、やり方は同じです。 全体が150株なら、過半数は76株、3分の2は100株でちょうどです。66株と67株の1株の差で、大事なことを決められるかどうかが変わります。
所有と経営は、別のもの
会社法第329条にこう書いてあります。
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
経営する人(取締役)を選ぶのは、株主です。 これを所有と経営の分離といいます。
株主総会と取締役会は、何が違うか
2つの会議があります。決める中身が違います。
次の回で、チームの側で同じ線を引きます。
なお、会社法第295条により、取締役会を置いていない会社では、株主総会が一切のことを決められます。 取締役会を置くと、株主総会が決められる範囲は、法律で決まっている事項と定款で定めた事項に限られます。
ここで迷う人が多い ① 株主総会と取締役会が混ざる
止まり方は3つです。
1つ目。どちらが偉いのか、と考えてしまう。 上下ではありません。役割が違います。 株主総会は「誰に任せるか」を決め、取締役会は「任された中で、どうやるか」を決めます。
2つ目。同じ人が両方に出ていると、区別がつかない。 実際、始めたばかりの会社では同じ人が株主でもあり取締役でもあります。 区別がつかないのが普通です。それでも、出資を受けた日から分かれます。 そのときのために、いま分けて覚えておきます。
3つ目。自分たちのチームには関係ないと思ってしまう。 チームでも同じ線が引けます。上の図の右の列がそれです。 次の回で、そこをやります。
持ち分を計算してみる
出資を受けると、持ち分が変わります。計算は引き算と割り算だけです。
全体が増えたからです。この、持ち分が下がることを 希薄化 と言います。 出資を受ける話をすると、必ず出てくる言葉です。
計算に要るのは、2つの数字だけです
自分の株数と、全体の株数。この2つです。
持ち分 = 自分の株数 ÷ 全体の株数
上の図では、自分の株数は最初から最後まで100株のままです。変わったのは全体だけです。
- はじめ … 100 ÷ 100 = 100%
- 1回目のあと … 100 ÷ 200 = 50%
- 2回目のあと … 100 ÷ 300 = 33.3%
新しく株を出すと、全体が増えます。 増えた分だけ、自分の割合が下がります。これが、この回のいちばん大事な計算です。
【計算1】いくら出してもらうと、何株出すことになるのか
ここからは架空の数字です。
図では「100株出す」と決め打ちでしたが、実際は金額から株数を決めます。 順番はこうなります。
会社の値段の決め方には流儀があります。 出資を受ける前の値段で計算するか、受けたあとの値段で計算するかで結果が変わります。この授業では、受ける前の値段で計算します。
会社の値段は、誰がどうやって決めるのか。 前の回に書いたとおり、始まっていない会社に決まった値段はありません。 話し合いで決めます。
話し合いといっても、何もないところからは決まりません。 手がかりになるのは、これまでにやってきたことです。 誰が買うか確かめた、いくらなら払うか聞いた、いくらかかるか見積もった。その積み重ねが、値段を話すときの材料になります。
何も確かめていない企画は、値段を話す材料がありません。 そのときは、相手の言う値段になります。
【計算2】渡す割合のほうから、逆に決める
先に「何%まで渡してよいか」を決めてから計算することもできます。 こちらのほうが、実際には多い形です。
300万円必要で、渡してよいのは20%まで、としたらどうなるか。
【計算3】続けて出資を受けると、どうなるか
図では2回まででした。3回目を計算してみます。
2回目のあと、全体は300株、自分は100株で33.3%でした。ここでもう100株出すと、
全体 400株。自分の持ち分は 100 ÷ 400 = 25%
4回目も同じだけ出すと、100 ÷ 500 = 20%です。
線をいつ割ったかを見ておきます。
- 1回目のあと(50%)… 過半数に届かない。半分では過半数になりません
- 2回目のあと(33.3%)… 3分の1を少し超えている
- 3回目のあと(25%)… 3分の1も割った
3分の1を割ると、何が変わるか。 3分の2の線は、残りの3分の1が反対すれば止められる線でもあります。3分の1を持っていれば、大事な決定を止められます。 割ると、止められなくなります。
過半数と3分の2に加えて、3分の1という線もある、ということです。
この3つの線を、まとめておきます。
| 持ち分 | できること |
|---|---|
| 過半数を超える | ふつうの決定を自分で通せる。取締役も選べる |
| 3分の2以上 | 大事な決定も自分で通せる |
| 3分の1を超える | 大事な決定を止められる |
| 3分の1以下 | 止めることもできない |
表は上から強い順です。 自分たちの企画で計算した割合が、どこに入るかを見てください。
ここで迷う人が多い ② 金額と株数がつながらない
止まり方は3つです。
1つ目。1株の値段がどこから来るのか分からない。 会社の値段を株数で割っただけです。 そして会社の値段は、話し合って決めています。 決まった計算式があるわけではありません。始まっていない会社の値段は、誰にも分かりません。
2つ目。「株を増やすと、1株の値段が下がるのでは」と思う。 下がりません。 新しい株も、同じ値段で出しています。全体の株数は増えますが、会社に入ってきたお金の分だけ会社の値段も増えているからです。
3つ目。自分の株数が減った気がしてしまう。 減っていません。 100株のままです。減ったのは割合だけです。 ここを取り違えると、次の計算がずれます。
確かめ方を1つ。 計算のたびに、「自分の株数」「全体の株数」「持ち分」の3つを並べて書いてください。
- 自分の株数 … 100株(変わらない)
- 全体の株数 … 100 → 200 → 300株(増える)
- 持ち分 … 100% → 50% → 33.3%(下がる)
変わらないもの、増えるもの、下がるもの。 この3つが並んでいれば、どこで間違えたかがすぐ分かります。
この3行は、そのまま課題の答えにもなります。 問2で聞かれているのは、まさにこの3行です。
【考えてみてください】自分たちのチームで、いちばん最後まで自分で決めたいことは何ですか
値段でも、作るものでも、誰に売るかでも構いません。1つだけ挙げてみてください。
この問いの答えは、このページのどこにも書いていません。 授業で聞きます。
挙げたものが、渡す割合を決めるときの手がかりになります。 それを自分で決め続けたいなら、その決定に必要な票の数を、手元に残す必要があります。
2人で始めるときの、50対50
チームで始める場合の話です。 2人で半分ずつ出して、50株ずつ持ったとします。
一見、公平に見えます。 実際にはこうなります。
意見が割れたとき、どちらも過半数になりません。 50は100の過半数ではないからです。割れたら、何も決まりません。
3人で33株ずつでも、同じことが起きます。 2人が同じ意見なら66株で過半数になりますが、3分の2の線には届きません。
この授業で会社を作るわけではありません。 ただ、割合を決めるときには「割れたらどうなるか」を一度計算しておく、という考え方だけ持っておいてください。次の回で、チームの決め方を先に決めます。
出したお金の割合で分けてみる
3人で始めるとして、出したお金が違う場合を計算してみます。 架空の数字です。
- Aさん 50万円
- Bさん 30万円
- Cさん 20万円
合計100万円です。100株を出すとすると、1株あたり1万円なので、
Aさん50株、Bさん30株、Cさん20株。 割合は 50% / 30% / 20% です。
Aさんひとりでは過半数に届きません(50は過半数ではない)。AさんとCさんで70%、AさんとBさんで80%。3分の2の線は、2人が組めば超えられます。
お金以外の貢献をどう扱うかは、この授業では扱いません。 時間を多く使った人、企画を思いついた人。それをどう数えるかは、法律ではなく話し合いの問題です。 まず、お金の割合で計算してみてください。 そのうえで、違うと思うなら、そこから話し合いが始まります。
配当は、自動的には出ない
もう1つ、株主が持つ権利に剰余金の配当を受ける権利があります。もうけが出たときに分けてもらう権利です。
ただし、会社法第453条は「配当をすることができる」と書いています。しなければならない、ではありません。 配当をするたびに、株主総会で決めます。
もうけを配るか、次の投資に回すかは、決める話です。 始めたばかりの会社は、配らずに事業に回すことのほうが多くなります。
配る場合の計算も、株数でできます。 全体120株で、配当に120万円を回すと決めたとします。
1株あたり 120万円 ÷ 120株 = 1万円
自分は100株なので100万円、投資家は20株なので20万円です。票の割り方と、まったく同じです。
出資してくれた人は、それを承知で出しています。 配当ではなく、会社が大きくなったときに株そのものの価値が上がることを見ています。借りたお金の利息とは、そこが違います。
借りた場合と並べると、違いがはっきりします。
- 借りた場合 … 決まった期日に、決まった額を返す。もうけが出ていなくても返す
- 出してもらった場合 … 返す期日はない。もうけが出ても、配るかどうかは決める
前の回で「そのあとに起きることが違う」と書いたのは、ここのことです。
薄まることは、悪いことではない
持ち分が下がっても、価値が下がるとはかぎりません。
100%を持っていても、お金が足りなくて何もできなければ、何も生まれません。33%でも、お金が入って事業が動けば、その33%のほうが大きいということはあります。
【計算4】比べてみます
架空の数字です。
第3回で見た「相手が何を差し出したか」と、同じ見方ができます。
逆に、お金だけを出して何もしない相手なら、渡す割合は小さいほうがよい、ということにもなります。
ここで迷う人が多い ③ 何%まで渡してよいのか分からない
止まり方は3つです。
1つ目。決まった正解を探してしまう。 ありません。 決め方は、「自分で決め続けたいことが何か」から逆算します。 上の【考えてみてください】で挙げたことが、そのまま手がかりです。
2つ目。渡しすぎたときに戻せると思っている。 戻せません。 一度出した株を取り戻すのは簡単ではありません。買い戻すには、そのときの値段で買い戻すことになります。 会社が大きくなっていれば、出してもらった額より高くなります。
3つ目。必要な額より多く集めようとしてしまう。 多いほうが安心に見えますが、多く集めるほど、渡す割合が大きくなります。 いくら必要なのかを先に決めて、その分だけ出す。 第10回で見積りを出したのは、このためでもあります。
分けて集める、という手もあります。 いま必要な300万円だけを先に集めて、続きは事業が動いてから集める。
そのほうが、渡す割合が小さくて済むことがあります。 事業が動いていれば、会社の値段が上がっているからです。【計算1】で見たとおり、会社の値段が高いほど、同じ額で渡す株数は少なくなります。
ただし、集められる保証はありません。 動かなければ、値段は上がりません。「いま全部集める」と「動かしてから集める」のどちらを選ぶかも、判断です。
自分たちの企画で、順番にやってみる
- いくら必要かを出す … 第10回の見積りから
- 何%まで渡してよいかを決める … 自分で決め続けたいことから逆算する
- 【計算2】の順で株数を出す … 受けたあとの値段 → 受ける前の値段 → 1株の値段 → 新しく出す株数
- 2つの線を確かめる … 過半数と3分の2を、自分ひとりで超えられるか
- 超えられないなら、どうするかを決める … 集める額を下げるか、渡す割合が大きくてもよいと判断するか
金額と割合が両方書けたら、この回は通っています
正しい割合かどうかではありません。 いくら集めて、何%渡すか。 この2つが書けていて、その理由が言えれば十分です。
理由の書き方には型があります。 「◯◯を自分で決め続けたいので、過半数は残したい。だから、渡すのは49%までにした」。決めたいことと、線と、割合が、1本につながっていれば十分です。
うまくいかないときは
見積りが出ていない。 第10回の課題に戻ってください。必要な額が決まらないと、割合も決まりません。
計算が合わない。 株数で出した割合と、金額で出した割合を、両方計算してください。 【計算1】でやったとおり、合っていれば同じ数字になります。 ずれたら、会社の値段を受ける前と受けたあとで取り違えていることが多いです。
割合を決められない。 まず50%で置いてみてください。 そのうえで、「これでは自分で決められなくなる」と思ったら下げます。置いてから動かすほうが、最初から決めるより早いです。
そもそも出資を受けない、という選択もある。 それで構いません。 前の回で見たとおり、借りる道もありますし、要る額を下げる道もあります。この回の課題は、受けた場合にどうなるかを計算してみる、という課題です。 実際に受けるかどうかとは別です。
次の回までにやること
このページの下に課題が5問あります。Teams から提出してください。締切は次の授業の前日の正午です。
自分たちの企画で、いくら出してもらうと持ち分がどうなるかを、実際に計算してきてください。 数字は自分で置いて構いません。
次の回では、チームの中で誰が何をやるのかを決めます。 この回で見た「決める権限をどこに置くか」という考え方を、チームの側でもう一度使います。
課題の問2は、このページの図と同じ計算です。 図を見ながらで構いません。問3は、自分たちの企画の数字でやります。 【計算2】の順番でやると、迷わずに出せます。
配布資料
課題
この課題について
正解が1つに決まる問題ではありません。 調べて書いても、考えて書いてもかまいません。 外れていても構わないので、まずは自分なりの答えを出してみてください。 自分で決めてから解説を読むと、そこがいちばん頭に残ります。 各問に字数の目安を添えてありますが、あくまで目安です。 ぴったり合わせる必要はありません。
- 提出は Teams の課題から
- 締切は 1月14日(木)正午
- 解説は次の回に、Teams でリンクをお知らせします
問1
自分ひとりでは決められなかったことを1つ教えてください。部活でも、バイトでも、家のことでも構いません。
誰の同意が要りましたか。 そのとき、どうやって決まりましたか。
目安 150〜250字
問2
あなたが100株を持っていて、それが全部だとします。ここに投資家が出資して、新しく100株が発行されました。
あなたの持ち分は何%になりますか。 さらに別の投資家から出資を受けて、もう100株出した場合はどうなりますか。
そのうえで、その持ち分で、ふつうの決定(過半数)と大事な決定(3分の2以上)に、自分だけで届きますか。
目安 150〜250字
問3
自分たちの企画で、いくら出してもらうと、持ち分がどうなるかを計算してください。金額と株数は自分で置いて構いません。
そのうえで、その持ち分でよいと思いますか。 理由も書いてください。
目安 150〜250字
問4
今回わかったことを踏まえて、自分たちの企画はどこが変わりましたか。 変わらなかった場合は、そのままでよいと判断した理由を書いてください。
たとえば「お金を払う人は使う人だと思っていたけれど、別の人かもしれないと気づいた」のように、前はこう思っていた/いまはこう思う、の形にすると書きやすくなります。
目安 100〜200字
問5
今回の授業で、いちばん分からなかったこと、もやもやしたことを教えてください。 課題の答えではなく、授業の内容についてです。 うまく言葉にできなければ、授業のどのあたりだったかだけでも構いません。
目安 50〜150字
この回の参考文献
会社法(平成十七年法律第八十六号)
第11〜13回で引いた条文の本文です。条文そのものが無料で読めます。第104条(株主の責任)から見てみてください。