はじめてのマネジメント第8回

08

11/23(振替予定)・11/27

本当に儲かるのか

先に読んで構いません。この回の例は、韓国グルメの店を仮に置いて書いてあります。10月に題材が決まったら、自分たちの企画に合わせて書き直します。数字も例なので、そのまま使わないでください。

この回で分かるようになること

この回で覚えるのは2つだけ

  1. 費用は、売れなくてもかかるものと、売れた分だけかかるものに分ける
  2. 何個売れば赤字にならないかを、割り算1回で出す

この2つだけです。 損益計算書の段の名前も、専門の言い方も、必要になったときに調べれば足ります。

この回で自分たちの企画に当てはめる計算例は、すべて架空の数字です。 説明のために作ったもので、どこかのお店の実際の数字ではありません。自分たちの数字に置き換えて読んでください。

実際に起きたことを、トヨタ・日産・資生堂の3社で見ます。 こちらの3社の数字は、決算短信で確かめた実際の数字です。

この回は、これまでの回の数字が全部集まってくるところです。 第4回で数えた人数、第7回で決めた値段、第5回で置いたかかるお金。それを1つの割り算に入れます。

割り算1回で出ます。 難しいのは計算ではなく、入れる数字を正しく集めるところです。

集める数字は3つだけです。

  1. 1か月に、売れなくてもかかるお金(この回で分けます)
  2. 1個の値段(第7回で決めました)
  3. 1個ぶんにかかるお金(この回で分けます)

この3つが揃えば、あとは割るだけです。

1つ目だけが、この回で新しく出す数字です。 2つ目と3つ目は、これまでの回で手元にあります。

売上が増えても、利益は減ることがある

まず、実際に起きたことを見ます。

トヨタ自動車の2025年3月期。 営業収益は48兆367億円で、前の期より6.5%増えました。過去最高です。 ところが営業利益は4兆7,955億円で、10.4%減っています。

日産自動車の同じ期は、落ちた場所が違います。

日産自動車 2025年3月期(連結・日本基準)売上高12兆6,332億円営業利益(黒字)698億円経常利益(黒字)2,102億円特別損失 −6,238億円ここで挟まる税金等調整前当期純損失4,136億円の赤字当期純損失6,709億円の赤字長さは金額に比例していません。落ちた場所を見る図です
経常利益までは黒字です。特別損失が挟まったところで赤字に変わります。「売上が過去最高」は、この下がどうなるかを何も言っていません。

同じ「増収でも利益が減る」でも、落ちた場所が違います。 トヨタは本業の段階で落ち、日産は本業の下で落ちました。

これが分かると、次に見るところが変わります。 本業で落ちたなら、売り方や作り方に原因があります。 本業の下で落ちたなら、その年かぎりの出来事かもしれません。

同じ「減益」でも、来年も続くのかどうかが違います。

この見分けは、自分たちの企画でも使えます。 今月うまくいかなかったのは、ふだんのやり方に問題があるのか、今月だけの出来事なのか。 分けて考えないと、直すところを間違えます。

分けるためには、記録が要ります。 何にいくら使ったかを、月ごとに残しておくこと。あとからまとめて思い出すことはできません。 第3回で「別れたらすぐ書く」と書いたのと、同じ話です。

トヨタのほうは、下の段も見ておきます。 当期利益は4兆7,650億円で3.6%減。営業利益で落ちたぶんが、そのまま下まで続いています。 営業利益率は10.0%で、前期は11.9%でした。

日産と違って、途中で大きく落ちる段がありません。 上から下まで、同じくらいの割合で減っています。本業で落ちたものは、そのまま下まで届くということです。

この1社の中に、この回の中身が全部あります。 段によって数字が変わり、どの段を見るかで会社の姿が変わる。

なぜ段に分かれているのか。 原因が違うものを、混ぜないためです。

本業でうまくいかなかったのか、借金の利息が重かったのか、その年かぎりの大きな損があったのか。全部を1つの数字にまとめると、どれが原因か分からなくなります。

日産の場合、本業(営業利益)は黒字でした。 前の年より大きく減ってはいますが、赤字ではありません。赤字にしたのは、その下に挟まった特別損失です。 段に分かれているから、そこが分かります。

自分たちの企画でも、同じ分け方ができます。 ふだんの商売でいくら残ったか。その年かぎりの出費がいくらあったか。分けておけば、来年も同じことが起きるのかどうかが分かります。

この上から下への並びを 損益計算書 と言います。段ごとに名前が付いていて、本業でのもうけが 営業利益、そこに本業以外の貸し借りなどを足し引きしたものが 経常利益、その年かぎりの大きな損が 特別損失、いちばん下に残るのが 当期純利益 です。日産は経常利益まで黒字で、特別損失が挟まったところで赤字に変わりました。

「売上が過去最高」は、利益について何も言っていません。 見出しを見たら、一度立ち止まって利益を見てください。

もう1つ、割り戻しておきます。 第4回でやった割り戻しは、ここでも使えます。

トヨタの営業利益率は 10.0% です。「100円売って、本業で10円残る」ということです。48兆円という数字は実感できませんが、100円のうち10円なら分かります。

前期は11.9%でした。 100円のうち11.9円から10円に下がった、ということです。

同じ1年の減りかたを、2通りで言えます。

この2つは、別の数え方です。 率は100円あたりの話で、額は会社ぜんぶの話。売上のほうが6.5%増えているので、片方からもう片方は出せません。 1.9ポイントに売上を掛けても、5,574億円にはなりません。

割合で見ると小さく、金額で見ると大きい。 どちらも同じ1年を指していますが、数え方が違います。 両方で言えるようにしておくと、話が通じやすくなります。

日産のほうも割り戻しておきます。 上の図の営業利益を売上高で割ると、100円売って、本業で残ったのは0.55円です。

トヨタは100円で10円、日産は100円で0.55円。 同じ自動車を作って売っている会社でも、残る額がこれだけ違います。

この0.55円を、自分たちの企画に置き換えてみてください。 100円売って0.55円しか残らないなら、40万円を埋めるのに、いくら売る必要があるでしょうか。 大きい会社は、そもそも売る量が桁違いに大きいので成り立ちます。小さく始めるなら、1個あたりに残る額を大きくするしかありません。

この差がどこから来るのかは、この授業では扱いません。 ただ、同じ業種でも中身が違うということだけ、見ておいてください。「業界の平均はこれくらい」という数字を使うときに、効いてきます。

費用は2つに分ける

自分たちの企画に戻ります。まず、かかるお金を2つに分けます。

前者を 固定費、後者を 変動費 と言います。分け方はいま書いたとおりで、名前が変わるだけです。

韓国グルメの店なら、こうなります。

分け方入るもの
売れなくてもかかるお金家賃、厨房機器のリース、水道の基本料金、通信費、看板、開けている時間ぶんの人件費
売れた分だけかかるお金食材、調味料、使い捨ての容器と袋、決済の手数料、1皿ごとに使うガスと水

人件費が上に来ることに注意してください。 お客さんが1人も来なくても、シフトに入った人には払います。注文が入るたびに人を呼ぶわけではありません。

この分け方は、どの企画でも同じ形になります。

売れなくてもかかるお金固定費場所 機材 通信 開けている時間ぶんの人人件費は上です。お客さんが1人も来なくても、シフトに入った人には払います売れた分だけかかるお金変動費材料 仕入れ 包む・送る 1件ごとの手数料上が大きい企画たくさん売らないと成り立ちません上が小さい企画少なく売っても回りますが、大きくもなりにくいどちらがよいということはありません上が小さければ、失敗したときの傷も小さくなります
上に何が入るかで、企画の性格が決まります。上が大きい企画を選んだなら、第4回で数えた人数が足りているかを、より慎重に確かめてください。

上が大きい企画を選んだなら、第4回で数えた人数が足りているかを、より慎重に確かめてください。

上を小さくする方法も、いくつかあります。 場所を借りずに始める、機材を買わずに借りる、人を雇わずに自分たちでやる(ただし時間は入れる)。第11回で「要る額を下げる」と書くのと、同じ話です。

分けにくいものが必ず出ます。 電気代のように、基本料金と使った分の両方があるもの。そういうものは、片方に寄せて、寄せたことを書いておけば足ります。 厳密に分けることが目的ではありません。

ここで迷う人が多い ① どちらに入れるか分からない

止まり方は3つです。

1つ目。両方の性質があるものが出る。 電気代、通信費、決済の手数料。基本料金は上(売れなくてもかかる)、使った分は下(売れた分だけかかる)です。 分けるのが面倒なら、上に寄せてください。 そのほうが、必要な数が多めに出ます。多めに出た数で成り立つなら、実際にはもっと余裕があります。

2つ目。人件費をどちらに入れるか迷う。 シフトで入ってもらうなら上です。 お客さんが来なくても払います。1件やるごとに払うなら下です。 自分たちの時間は、第7回でやったとおり時給に直して、上に入れてください。

3つ目。買い切りの機材をどう扱うか分からない。 何年使うかを決めて、1年ぶんに割ります。 30万円のものを3年使うなら、1年10万円、1か月なら約8,300円。これを上に入れます。 第5回でやったのと同じやり方です。

迷った時間を、正しさに使わないでください。 どちらに寄せたかを書いておけば、あとで直せます。 書いていないと、直せません。

もう1つ、忘れられやすいものがあります。 売れなかったものの分です。

作ったのに売れなかった、仕入れたのに使わなかった。これは「売れた分だけかかるお金」に入りません。 売れていないからです。かといって、出ていったお金であることは変わりません。

この授業では、上(売れなくてもかかるお金)に寄せてください。 毎月これくらいは捨てる、という額を見込んでおきます。見込んでおけば、その分も埋める計算になります。

何個売れば赤字にならないか

分けたら、1つの式で出ます。

売れなくてもかかるお金 ÷(1個あたりの値段 − 1個あたりにかかるお金)

分母は、1個売れたときに手元に残る額です。これで場所代を割ると、何個売れば足りるかが出ます。

この、赤字と黒字が入れ替わる点を 損益分岐点 と言います。 面接や資料で出てくる言い方です。「何個売れば赤字にならないか」と同じことを指しています。

売れなくてもかかるお金埋めなければならない穴の大きさ1個あたりの値段 − 1個あたりにかかるお金1個売れたときに手元に残る額何個売れば足りるか赤字と黒字が入れ替わる点。損益分岐点と言います割る前に、分母を見てください分母がマイナス1個売るたびに穴が深くなります。何個売っても埋まりません分母がゼロに近い1個10円しか残らないなら、40万円を埋めるのに4万個要りますどちらも、割る前に第7回に戻ってください
穴の大きさを、1個ぶんの埋まる量で割ると、何個要るかが出ます。それだけの式です。

第7回で「下限を割らない」と書いたのは、分母がマイナスになる形のことです。

韓国グルメの店なら、こう当てはめます。

1か月の家賃と人件費など(売れなくてもかかるお金) ÷(1皿の値段 − 1皿ぶんの食材と容器)= 1か月に必要な皿数

出てきた皿数を、営業日数で割ってください。 1日に何皿かが出ます。その数を、店の席数と回転数で出せるかを確かめます。 出せないなら、値段か、席数か、営業時間を動かします。

「1か月」で計算するのが分かりやすい理由は、家賃も人件費も月ぎめだからです。年で計算すると、途中で値段を変えたときに合わなくなります。

数字を入れてみます

架空の数字です。1か月で見ます売れなくてもかかるお金40万円家賃15万+人件費20万+その他5万1皿の値段800円1皿ぶんの食材と容器300円1皿売れて残るのは 800 − 300 = 500円40万円 ÷ 500円 = 800皿1か月に800皿売れば、赤字になりません800 ÷ 25日 = 1日に32皿ここから先が、この回の本題です答えが小数になったら切り上げます。足りないほうに丸めると赤字になります
割り算2回です。難しいのは計算ではなく、入れる数字を正しく集めるところです。

ここまでが計算です。 ここから先が、この回の本題になります。

1皿あたりに残る額が、いちばん効きます

架空の計算例です。もとは 40万円 ÷ 500円 = 800皿そのまま40万 ÷ 500800皿値段を900円に40万 ÷ 600667皿17%減食材が400円に40万 ÷ 4001,000皿25%増家賃を1万円下げる39万 ÷ 500780皿2.5%減手をつける順番は、1個あたりに残る額が先です割り算の分母を動かすほうが、分子を動かすよりずっと大きく効きますただし、値段を上げるには理由が要ります。作れないなら原価のほうを見ます
家賃の交渉より、1個あたりを100円動かすほうが、ずっと大きく効きます。家賃を1万円下げても、必要な数は20皿しか減りません。

家賃の交渉や、通信費の見直しは、やっても効きが小さいことが多いです。 それより、値段を100円上げられないか、原価を50円下げられないかを先に見てください。

その数は、第4回で数えた人数に収まっているか

ここが、この回でいちばん大事なところです。

この回で出た数何個売れば赤字にならないか第4回で数えた人数初年度に取れる分超えている紙の上では合っていても、そんなに人がいません第5回の4つに戻る。値段を上げる/届け方を変える/かかるお金を減らす収まっている次に進めますぎりぎりか、倍の余裕があるかを書き留めておく大きく下回っている余裕があります。ただし、そこで終わらせないでくださいもっと確かめる/値段を上げてみる。たいてい、どこかの数字が甘い甘くなりやすいのは2つ。自分たちの時間を入れていない/第4回の絞り方が緩い
ここが、この回でいちばん大事なところです。計算が合っていても、そんなに人がいなければ成り立ちません。

余裕があるときにやることは2つです。 1つは、もっと確かめること。 本当にその人数が来るのかを、第3回のやり方でもう一度聞きに行きます。もう1つは、値段を上げてみること。 余裕があるうちなら、上げても成り立つかもしれません。

韓国グルメの店で「1日に80皿」と出たとします。席が10で、昼と夜に2回転なら、1日に入るのは20組。 1組が4皿頼んでちょうど80皿です。成り立つかどうかは、この突き合わせで決まります。

1組が4皿も頼むか。 そこは第3回で聞いた人の話に戻ります。紙の上の80皿と、実際に来る人の注文は別のものです。

ここで迷う人が多い ② 計算した数が、現実に思えない

止まり方は3つです。

1つ目。出た数が大きすぎる。 上の計算をもう一度見てください。 たいてい、1個あたりに残る額が小さすぎます。 値段が低いか、原価が高いかのどちらかです。第7回に戻って、値段を見直せます。

2つ目。出た数が小さすぎて、簡単に思える。 売れなくてもかかるお金を、入れ忘れていないか見てください。 家賃、通信費、自分たちの時間。とくに自分たちの時間は、忘れられます。

3つ目。第4回で数えた人数と、桁が違う。 どちらかが間違っています。 第4回の数え方か、この回の費用の置き方か。両方を並べて、どちらの前提が怪しいかを見ます。 第4回と第5回でやったのと同じやり方です。

【考えてみてください】自分たちの企画は、1個あたりいくら残りますか

値段から、1個ぶんの原価を引いた額です。第7回で決めた値段と、この回で分けた費用から出ます。

この問いの答えは、このページのどこにも書いていません。 授業で聞きます。

この額が、この回でいちばん大事な数字です。 売れなくてもかかるお金を、この額で割ると、何個売ればよいかが出ます。

この額が小さいと、何をやっても苦しくなります。 1個あたり50円しか残らないなら、40万円を埋めるのに8,000個要ります。 第4回で数えた人数で足りるでしょうか。

逆に、1個あたり5,000円残るなら、80個で足ります。 同じ40万円でも、必要な数が100倍違います。

この計算が置いている前提

この計算は、強い前提の上に立っています。 教科書に載っている計算ですが、そのまま信じないでください。

架空の計算例です。もとは800皿置いている前提と、それが崩れる場面必要な数値段が一定である800円を700円で売ると1,000皿1個あたりにかかるお金が一定である食材が300円から250円に下がると728皿売れなくてもかかるお金が一定である席を増やすと、ある日いきなり段になって上がる作った分がそのまま売れる10皿のうち2皿捨てると、8皿で10皿ぶんを負担する計算した数は、その瞬間の一枚の写真です前提が変わったら、割り算をもう一度するだけです
教科書に載っている計算ですが、そのまま信じないでください。4つとも、実際に起きます。

「今日だけ100円引き」は、その日だけ必要な数が25%増えるということです。 まとめ仕入れのほうも、買った分が売れ残ると逆に損をします。

計算し直すのは、そんなに手間ではありません。 割り算1回です。 数字を1つ変えて、もう一度割るだけです。表計算のソフトに入れておくと、数字を変えるたびに答えが出ます。

それでも、この計算をやる意味はあります。 成り立たないことが、始める前に分かるからです。

計算して足りないと分かったら、始めなくて済みます。 あるいは、始める前に形を変えられます。始めてから分かると、すでにお金を使ったあとです。 第7回で同じことを書きました。

この授業では、成り立たないと分かったチームのほうが、あとが楽です。 第5回でも同じことを書きました。確かめる回は、全部そうです。

第3回、第4回、第5回、そしてこの回。 どれも、思っていたのと違うと分かるための回です。違いが早く分かるほど、直す時間が残ります。

どの範囲を、どの基準で測った数字か

もう1つ、実際の例を見ておきます。

資生堂の2024年12月期を、連結と単体で並べてみます。

株式会社資生堂 2024年12月期連結(IFRS)子会社を含めた全体売上高 9,905億8,600万円前期比 1.8%増親会社の所有者に帰属する当期利益108億1,300万円の赤字単体(日本基準)資生堂1社だけ売上高 2,456億7,800万円前期比 5.3%減当期純利益215億2,300万円の黒字同じ会社の同じ期で、姿が正反対です売上の大きさも4倍違います数字を比べるときは「どの範囲を、どの基準で測ったか」を必ず確かめます
連結か単体か、どの会計基準かで、見える形が変わります。最終回で他の人の企画の数字を見るときにも、同じことをします。

連結は子会社を含めた全体、単体は資生堂1社だけです。それで売上の大きさが4倍違います。

最終回で、他の人の企画の数字を見るときにも同じことをします。

もう1つ、資生堂は「コア営業利益」という独自の区分を使っています。 決算短信の注記に、営業利益から構造改革の費用や減損損失などを除いて算出していると書かれています。

なぜ独自の区分が要るのか。 IFRS には、日本基準にある経常利益や特別損失の区分がないからです。突発的な損失が営業利益の中で効いてしまうので、それを除いた数字を各社が自分で作っています。

だから、他社と比べるときは注意が要ります。 「営業利益」という同じ名前でも、基準が違えば中身が違います。

この授業でも、同じことが起きます。 最終回で13人の企画を聞きますが、1人ひとり、費用に何を入れたかが違います。

揃える必要はありません。 揃えるより、何を入れたかを言えるほうが大事です。 揃っていない数字どうしを、そうと知らずに比べるのが、いちばんまずいことです。

自分の時間を入れた人と、入れなかった人。 家賃を入れた人と、実家でやるから入れなかった人。同じ「1個あたり◯円残ります」でも、中身が違います。

だから、聞くときは「何を入れましたか」と聞いてください。 第14回の質問の型の1つ目、数字の出どころを聞く、と同じことです。

ここで迷う人が多い ③ 会社の数字と、自分たちの数字が結びつかない

止まり方は3つです。

1つ目。桁が違いすぎて、別の話に思える。 計算は同じです。 トヨタも、1台あたりいくら残るかを出しています。桁が12個違うだけで、やっていることは 売上 − 費用 です。

2つ目。段の名前を覚えようとして止まる。 覚えなくて構いません。 見るのは1つだけです。上から下へたどって、どこで大きく減ったか。 それが分かれば、名前は調べれば出てきます。

3つ目。自分たちには特別損失なんて無い、と思う。 あります。 買った機材が壊れた、仕入れたものが売れずに捨てた。その年かぎりの大きな損は、規模が小さくても同じ形で起きます。

そして、その損を「ふだんの商売の結果」と混ぜないでください。 機材が壊れて10万円かかった月を、ふつうの月として計算に入れると、実際より悪く見えます。 逆に、その分を無かったことにすると、実際より良く見えます。

どちらも、次の判断を間違えさせます。 悪く見えれば、やめなくてよいものをやめます。良く見えれば、直すべきものを直しません。分けて書くのは、そのためです。

分けて書いて、両方見せる。 日産の決算短信がやっているのは、それです。

この回の数字は、最終回の5枚目になります

5枚目「どう儲けるのか」に入るのは、この3つです。

3つとも、この回までに手元にあります。 最終回で新しく作るものはありません。

質疑でよく聞かれるのは、3つ目です。 「その個数は、第4回で数えた人数に収まっていますか」。この回でその突き合わせをやっておけば、そのまま答えられます。

答えられなかった場合、投資家役はそこで判断できなくなります。 何個売れば成り立つかが分からない企画には、いくら出せばよいかも決められません。

次の回までにやること

このページの下に課題が5問あります。Teams から提出してください。締切は次の授業の前日の正午です。

2つに分けた費用の一覧を作ってきてください。 分けにくかったものは、どちらに寄せたかも書いておいてください。

そのうえで、何個売れば赤字にならないかを計算してきてください。 割り算1回です。

出た数を、第4回で数えた人数と並べてください。 収まっていれば次に進めます。収まっていなければ、そこが次に直すところです。

次の回は「どの数字を見て判断するか」です。 この回で出した数字を、毎週見る形に直します。 1年に何個、ではなく、今週は何個だったか。

自分たちの企画で、順番にやってみる

  1. 費用を全部書き出す … 思いつくまま。多いほうが安全です
  2. 2つに分ける … 売れなくてもかかるもの/売れた分だけかかるもの。迷ったら上に寄せる
  3. 1個あたりに残る額を出す … 値段 − 1個ぶんの費用
  4. 割る … 売れなくてもかかるお金 ÷ 1個あたりに残る額
  5. 第4回の人数と並べる … 収まっているか
  6. 収まっていなければ、第5回の4つを動かす … そして3に戻る

数字が2つ並べば、この回は通っています

何個売れば赤字にならないかと、第4回で数えた人数この2つが並んでいて、どちらが大きいかを言えれば十分です。

うまくいかないときは

費用が思いつかない。 1か月ぶんの支払いを、全部書き出してみてください。 家賃、電気、ガス、水道、通信、保険、材料。思いつかないなら、実家の光熱費の請求を見せてもらうのも手です。

1個あたりの原価が出せない。 第7回で1つ作ってみたはずです。 そのときの材料費が、そのまま使えます。作っていないなら、いま1つ作ってみてください。

割り算の答えが小数になる。 切り上げてください。 799.6皿なら800皿です。足りないほうに丸めると、赤字になります。

日数で割った答えも、切り上げます。 1日31.4皿なら32皿です。この丸めのぶんだけ、実際には少し余裕が出ます。 それでよいのです。

チームで数字が違う。 入れた費用の一覧を並べてください。 どちらかが何かを入れ忘れています。数字を突き合わせるより、一覧を突き合わせるほうが早いです。

配布資料

課題

この課題について

正解が1つに決まる問題ではありません。 調べて書いても、考えて書いてもかまいません。 外れていても構わないので、まずは自分なりの答えを出してみてください。 自分で決めてから解説を読むと、そこがいちばん頭に残ります。 各問に字数の目安を添えてありますが、あくまで目安です。 ぴったり合わせる必要はありません。

  • 提出は Teams の課題から
  • 締切は 11月26日(木)正午
  • 解説は次の回に、Teams でリンクをお知らせします

問1

思っていたより原価がかかっていそうだと感じたものを1つ教えてください。

そう思ったとき、何を見ていましたか。 値段そのものでなく、目に入ったもののほうを書いてみてください。

目安 150〜250字

問2

トヨタ自動車の2025年3月期は、営業収益が6.5%増えて過去最高でしたが、営業利益は10.4%減りました。 日産自動車の同じ期は、経常利益が2,102億円の黒字でしたが、最終は6,709億円の赤字でした。

この2つは、同じ「増収でも利益が減った」ですが、落ちた場所が違います。 どこが違うと思いますか。

目安 150〜250字

問3

自分たちの企画で、何個売れば赤字にならないかを計算してください。

そのうえで、その数は第4回で数えた人数に収まっていますか。 収まっていない場合は、何を変えるかを書いてください。

目安 150〜250字

問4

今回わかったことを踏まえて、自分たちの企画はどこが変わりましたか。 変わらなかった場合は、そのままでよいと判断した理由を書いてください。

たとえば「お金を払う人は使う人だと思っていたけれど、別の人かもしれないと気づいた」のように、前はこう思っていた/いまはこう思う、の形にすると書きやすくなります。

目安 100〜200字

問5

今回の授業で、いちばん分からなかったこと、もやもやしたことを教えてください。 課題の答えではなく、授業の内容についてです。 うまく言葉にできなければ、授業のどのあたりだったかだけでも構いません。

目安 50〜150字

Teams の課題から提出してください。

この回の参考文献

参考文献の一覧

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