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9/28, 10/2 (rescheduled)
What Kinds of Businesses Are Out There?
この授業で言う「マネジメント」が何かは、オリエンテーションのページにまとめてあります。
この回で分かるようになること
- 会社が「誰から」「何に対して」お金を受け取っているかを、自分の言葉で言えるようになる
- 売上を掛け算の形に分けて書けるようになる
- 自分が知っている会社について、思い込みと実際の数字がずれることがあると気づく
商売は、誰かがお金を払うから続く
商売と聞くと、店に商品が並んで、お客さんがそれを買う場面を思い浮かべると思います。お金を出す人と、受け取る人がその場にいて、目の前でやりとりが起きる。 いちばん分かりやすい形です。
ところが、みなさんが毎日使っているものの多くは、この形になっていません。
LINE でメッセージを送るのに、お金を払っていますか。YouTube を見るのに払っていますか。Google で検索するときはどうですか。払っていないはずです。 それでも、これらの会社はつぶれていません。それどころか、社員が何千人もいて、毎年大きな利益を出しています。
誰かが払っています。 ただ、それがみなさんではないというだけです。
似たことは、身の回りにもあります。部活の遠征でバスを借りるとき、そのお金はどこから出ていますか。 部費だけで足りていないなら、学校が出しているか、保護者会が出しているか、地域の企業が出しているかもしれません。乗っているのはみなさんですが、払っているのは別の誰かです。
商売を見るときは、「使う人」と「払う人」を最初に分けます。 ここを分けずに考え始めると、そのあとの計算が全部ずれます。
この回で覚えるのは2つだけ
新しく覚えることは2つしかありません。
- 誰から、何に対して お金を受け取るか
- 売上を 掛け算 の形に分けて書く
この2つだけです。 事例そのものを覚える必要はありません。同じ2つの考え方を、違う会社で3回見るだけです。 3回見ると、自分の企画に当てはめられるようになります。
事例として、LINEヤフー・サンリオ・カバー(ホロライブ)の3社を見ます。
「誰から」と「何に対して」を分けて書く
商売を見るときは、次の2つを分けて考えます。
- 誰から 受け取っているか(お金を出しているのは誰か)
- 何に対して 受け取っているか(何と引き換えにお金が動いたか)
なぜ2つに分けるのか。 混ぜて書くと、あとで数えられなくなるからです。
たとえば「若い人向けのアプリで稼ぐ」と書いたとします。これは「誰から」でも「何に対して」でもありません。 誰が払うのかが書かれていませんし、何と引き換えなのかも書かれていません。このまま第4回に進むと、何人いるかを数えられません。 数えるものが決まっていないからです。
分けて書くと、こうなります。
- 誰から … アプリを使う人本人/広告を出したい企業/アプリの中でアイテムを買う一部の人
- 何に対して … 広告が表示される枠/アイテムそのもの/広告を消す権利
どれを選ぶかで、この先14回の中身が全部変わります。 「使う人本人から」を選べば、何人が払うかを数えます。「広告を出したい企業から」を選べば、どれだけ表示されるかを数えます。数えるものが違います。
選び直してもかまいません。 いまは仮で構いません。第3回で実際に人に聞くと、たいてい変わります。 変わったら、そのとき書き直します。
両方書いてもかまいません。 実際、これから見る3社はどれも「誰から」を複数持っています。ただし、いちばん大きいものがどれかは決めておいてください。 全部が同じ重さだと、力を入れる先が決まりません。
使う人と払う人が違うことがある
さっきの「部活の遠征費」と同じ形は、商売の中にもたくさんあります。
無料で遊べるゲーム。 ほとんどの人は1円も払いません。払っているのは、アイテムを買う一部の人です。払わない人が大勢いることが、払う人にとっての価値になっていることもあります。対戦する相手がいなければ、そのゲームは面白くありません。
学割。 映画館や定期券で、学生は安く買えます。安くしても映画館が損をしないのは、空いている席に人が入るほうが、空いたままより良いからです。払う額は違っても、払う人は本人です。
給食費。 食べるのはみなさんですが、材料を仕入れた業者にお金を払うのは学校です。間に人が挟まると、誰が払っているかが見えにくくなります。
使う人と払う人が違う形は、珍しくありません。 ただ、企画を書くときにここを混ぜると、「みんなが喜ぶけれど、誰もお金を出さない」ものができあがります。
この形はとても書きやすいので、気をつけてください。 「地域の人が集まれる場所を作りたい」「困っている人を助けたい」。やりたいことは立派で、使う人も喜びます。 ところが、そこに誰が払うのかが書かれていないと、始めた翌月から自分の財布が減っていきます。
やりたいことを変える必要はありません。 変えるのは、そこに誰が払うのかを見つけるところです。地域の人が集まる場所なら、集まった人に何かを売るのか、場所を貸すのか、自治体や企業が費用を出すのか。払う人は必ずどこかにいます。 見つけるまでが企画です。
【考えてみてください】いま使っているものは、誰が払っているか
ここでいったん止めて、考えてみてください。
あなたが今日ここに来るまでに使ったもののうち、お金を払わなかったものを1つ思い浮かべてください。 アプリでも、道路でも、駅のトイレでも構いません。
それは誰が払っていますか。 そして、その人はあなたに何をしてほしいと思っているでしょうか。
この答えは、ここには書きません。 課題の問1がこの問いです。今日のうちに答えを出さず、家で書いてください。 授業のあいだに思いついたことがあれば、忘れないうちにメモしておくと、書くときに楽になります。
ここで迷う人が多い ①「誰から」が書けない
自分の企画で「誰から」を書こうとすると、多くの人がここで止まります。止まり方は3つに分かれます。
「自分」と書いてしまう。 「自分がお金を出して始める」と書く人がいます。これは「誰から受け取るか」ではなく「誰が出資するか」の話で、第11回で扱います。いま書くのは、始めたあとに、外から入ってくるお金のことです。
「みんな」と書いてしまう。 「みんなが買ってくれる」では、次の回で人物を描けません。全員に向けた商品は、たいてい誰にも刺さりません。 「みんな」と書きたくなったら、いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべてください。その人が誰かを書きます。
「まだ決まっていない」で止まる。 これがいちばん多いと思います。決まっていなくて構いません。 仮に1つ置いて、先に進んでください。第3回で実際に人に聞くと、たいてい変わります。 いま書くのは、確かめに行くための出発点です。
それでも手が動かないときの、いちばん簡単な始め方があります。 自分がこの1か月にお金を払ったものを3つ書き出してください。 そのうち1つを選んで、「同じものを、自分が売るとしたら誰に売るか」を考えます。自分が払ったことのあるものは、払う理由が分かっています。 ゼロから考えるより、ずっと早く進みます。
「その商売はもうある」と思っても、止めないでください。 すでにあるということは、払う人が実在するということです。第6回で、その相手を実際に見に行きます。誰もやっていない商売より、すでに誰かがやっている商売のほうが、確かめられることが多いです。
事例1 LINEヤフー — 無料のアプリは誰が支えているのか
ここから3つの会社を見ます。知っているつもりの会社ほど、数字を見ると意外だった、ということが起きます。
使っているところを思い出してください
LINE も Yahoo! も、LINEヤフー株式会社 が運営しています。
LINEのトーク一覧を開くと、いちばん上に広告が出ます。 友だちとのやりとりの上に、知らない会社の商品が並んでいるはずです。Yahoo! のトップページにも、検索窓の周りに広告が並びます。公式アカウントから届くメッセージも、多くは企業がお金を払って送っているものです。
これらを使うのに、みなさんは1円も払っていません。
では、誰が払っているのか
答えのひとつは 広告主 です。あの枠に自分の会社の商品を出したい企業が、LINEヤフーにお金を払っています。
「誰から・何に対して」で書くと、こうなります。
- 誰から … 広告を出したい企業
- 何に対して … 自分の広告が、狙った人に表示されること
使う人(みなさん)と、払う人(企業)が違います。 これが、無料のサービスが成り立つしくみです。
ここまではよく言われる話です。数字を見ると続きがあります
2026年3月期(決算短信 2026年5月8日)の売上収益は 2兆363億6,600万円(前期比6.2%増)で、過去最高でした。
このうち、広告を含む メディア事業は7,351億円 です。
全体のうち、広告はどれくらいだと思いますか。 半分以上でしょうか。
約36%です。 3分の1と少しです。
戦略事業には PayPay などが含まれます。コンビニやドラッグストアのレジで、スマホの画面を見せて払う、あれです。
何が言えて、何が言えないか
「無料アプリのお客さんは広告主」は正しいです。実際に、広告主が7,351億円を払っています。
「だから売上の大半は広告だ」とまでは言えません。 3分の1と少しです。しかも伸びているのは広告ではなく、決済のほうです。
ひとつの会社の中に、いくつもの商売が同時に動いています。 LINEヤフーは「広告の会社」でも「決済の会社」でもなく、両方をやっている会社です。
自分の企画も、途中でこうなることがあります。 最初は1つの売り方で始めても、やっているうちに別の売り方が育つ。それは失敗ではなく、よくあることです。
ここから持ち帰ること
1つ目。 使う人が無料でも、商売は成り立ちます。払う人が別にいるだけです。
2つ目。 「たぶんこうだろう」と思っていることは、数字を見ると3分の1くらいしか合っていないことがあります。 広告が売上の大半だという思い込みは、実際には36%でした。
3つ目。 それでも、思い込みが全部外れていたわけではありません。 広告主が払っているのは事実です。外れたのは「どれくらい」の部分です。 数字を見る意味は、当たりか外れかを決めることではなく、どれくらいかを知ることにあります。
事例2 サンリオ — 分からないことは、分からないと書く
見たことがあるはずのもの
ハローキティやクロミを作っているのは 株式会社サンリオ です。ぬいぐるみや文房具を売っている会社だと思うのが自然です。
ところが、もう少し広く見てください。 コンビニのお菓子の袋にキャラクターが描いてあることがあります。ドラッグストアの絆創膏にも、スーパーのパンの袋にもいます。あれを作っているのは、サンリオではありません。
お菓子の会社が「この袋にキャラクターを描かせてください」と頼み、売れた分に応じて使用料を払います。 これを ライセンス(キャラクターを他の会社に使わせて、使用料を受け取るしくみ)と言います。
- 誰から … キャラクターを使いたい他の会社
- 何に対して … 自分の商品にキャラクターを使ってよいという許可
サンリオは、その商品を作っていません。 工場も持たず、並べる店も持ちません。それでもお金が入ります。
数字を見ます
2026年3月期(決算短信 2026年6月23日)は、売上高 1,940億8,800万円(前期比33.9%増)、営業利益 778億5,900万円(同50.3%増)。売上高も各利益も過去最高でした。
営業利益率(売上のうち、本業でどれだけ儲けが残ったかの割合)は 約40.1% です。売上100円のうち、40円が本業の儲けとして残る計算になります。これはかなり高い数字です。
ここが、この事例の本題です
「ライセンスのほうが儲かるから利益率が高いんだ」と言いたくなります。 本当にそうでしょうか。
決算短信を開いて確かめます。 サンリオが分けて公表しているのは 地域ごと(日本、北米、欧州など)の数字でした。ライセンス事業だけの数字は、そこには載っていません。
ここで「分からない」と結論づけるのは、少し早いです。
探す場所は、決算短信だけではありません。 会社は説明会でも話します。その記録が残っていることがあります。実際、サンリオの役員が個人投資家向けのセミナーで、「物販やテーマパークの営業利益率は10〜20%ほどだが、ライセンス事業は60〜70%になる」と述べた記録があります(2025年7月のセミナー。書き起こしを載せているメディアによるもの)。
出所によって、重みが違います
この2つは、同じ重みではありません。
時点も違います。 60〜70%が語られたのは2025年7月のセミナーで、この回で見ている40.1%は2026年3月期の実績です。別の期の数字なので、並べて引き算はできません。
だから、こう書きます
「分からない」と書くのは、探せる範囲を探したあとです。
- 決算短信を開く。そこには無かった
- 説明会の記録を探す。60〜70%という発言が見つかった
- ただし出所の種類が違うので、そう断って書く
ここまでやって、それでも出てこなければ「確かめられませんでした」と書きます。 これは第3回でも同じです。話を聞きに行って聞けなかったとき、どこまでやって、どこで止まったかを書けば、それも報告として成り立ちます。
最終回で発表するとき、「決算短信には無かったので、説明会の記録を見ました」と言えると、むしろ信用されます。 分かったふりをして数字を作ると、聞いている人には分かります。
ここから持ち帰ること
1つ目。 物を作らずに稼ぐ形があります。 持っているものを使わせて、使用料を受け取ります。
2つ目。 1つの資料に無くても、別の資料にはあることがあります。 決算短信は会社が出せる範囲で出したもので、知りたいことが全部載っているわけではありません。探す場所を増やすと、見つかることがあります。
3つ目。 どこで見つけたかを、数字と一緒に持っておいてください。 開示書類か、会社の資料か、第三者の記録か。同じ数字でも、出所によって重みが違います。
ここで迷う人が多い ②「何に対して」が書けない
「誰から」は書けたのに、「何に対して」で止まる人がいます。止まり方は2つです。
商品の名前を書いてしまう。 「Tシャツに対して」と書く人がいます。間違いではありませんが、そこで止まると次に進めません。 買った人は、布に対してお金を払ったのでしょうか。「そのTシャツを着ている自分」に払ったのかもしれませんし、「イベントに行った記念」に払ったのかもしれません。 サンリオの例で言えば、お菓子の会社が払ったのは絵そのものではなく、「その絵があると売れる」という見込みに対してです。
「サービス」と書いてしまう。 「便利なサービスに対して」では、何も言っていないのと同じです。便利さのどこにお金を払ったのか。 早いことですか。近いことですか。失敗しないことですか。 そこまで書けると、第6回で相手と比べるときに使えます。
うまく書けないときは、逆から考えてみてください。 その人がお金を払わなかったとしたら、代わりに何をしますか。自分でやりますか。我慢しますか。別の店に行きますか。 そこで諦めているものが、「何に対して」の中身です。
もう1つの手があります。 その人が払ったあとに何が変わるかを書く、という考え方です。写真を撮ってもらった人は、撮ってもらう前と後で何が変わりましたか。 手元にデータが増えたことでしょうか。それとも、その日一日が特別になったことでしょうか。 変わったもののほうが、「何に対して」に近いです。
ここで書いたものは、第2回でもう一度使います。 第2回では、9つのマスのうち「価値提案」というところに、これを書き写します。いま書いておくと、次の回で手が止まりません。
事例3 カバー(ホロライブ) — 直感が数字と合わない
画面に流れる、色のついたコメント
配信の画面に流れる、色のついたコメント。あれが投げ銭(スーパーチャット)です。 金額によって色が変わって、しばらく画面に残ります。
見たことがある人は多いと思います。 そして、「VTuber はスパチャで稼いでいる」というイメージがあるはずです。
この直感が、数字と合いません。
数字を見ます
ホロライブを運営する カバー株式会社 の2026年3月期(決算短信 2026年5月14日)の売上高は 493億3,000万円 で、前期比 13.7%増 でした。伸びています。
ところが分野ごとに見ると、こうなっていました。
「誰から」で書き直すと
- 誰から … 配信を見る人本人(投げ銭・メンバーシップ)/グッズを買う人/ライブのチケットを買う人/コラボしたい他の会社
- 何に対して … 応援を届けること/手元に残る物/その場にいる体験/キャラクターを使う許可
「誰から」が4つあります。 そして、減っているのは1つ目だけです。
もし「誰から」を1つしか書いていなかったら、この会社は縮んでいるように見えたはずです。分けて書いたから、伸びている場所と減っている場所が別々に見えました。
もうひとつ、気になることがあります
売上は13.7%伸びました。ところが営業利益は 70億5,600万円 で、前期比 11.8%減 です。
売上が伸びれば利益も伸びる、とは限りません。
さらに、当期純利益(最後に残る利益)は 30億1,600万円で前期比45.7%減。売上が伸びているのに、最後に残るお金は半分近く減っています。
この理由は、この回では扱いません。 第8回で、売上から利益までの流れを1段ずつ追います。いまは「売上と利益は別のものだ」というところまで持っていてください。
ここから持ち帰ること
1つ目。 いちばん目立つものが、いちばん稼いでいるとは限りません。 画面に流れる投げ銭は誰の目にも入りますが、売上では減っていました。
2つ目。 「誰から」を分けて書いておくと、どこが伸びてどこが減ったかが別々に見えます。 1つにまとめて書いていたら、この会社は「伸びている」で終わっていました。
3つ目。 売上が伸びても、利益は減ることがあります。 ニュースの見出しは売上だけを取り上げることが多いので、利益まで見る癖をつけてください。
3枚を並べると、何が見えるか
3つの会社を見ました。覚えてほしいのは会社の名前ではなく、3つに共通していることです。
どの会社も、「誰から」が1つではありません。
- LINEヤフー … 広告を出したい企業/決済を使う人と店
- サンリオ … グッズを買う人/キャラクターを使いたい会社
- カバー … 配信を見る人/グッズを買う人/ライブに来る人/コラボする会社
そして、どの会社も、いちばん目立つ稼ぎ方と、いちばん伸びている稼ぎ方が違いました。
これは偶然ではありません。 入口が広いほど人が来ます。ところが、入口で払う額は小さいことが多い。無料だったり、安かったりします。その先で、別の形でお金が入ります。
だからニュースの見出しだけでは、その会社が何で稼いでいるかは分かりません。 見出しは目立つほうを書きます。決算短信は、お金の流れのほうを書きます。 見出しを見たら、元の資料まで戻ってください。戻り方は、この授業の後半で「一次情報の探し方」として扱います。
自分の企画でも同じことが起きます。 自分がいちばん作りたいものと、いちばんお金が入るものが違うことがあります。そのときに気づけるように、「誰から」を1つに絞らずに書いておいてください。
売上を掛け算で書いてみる
「誰から」「何に対して」が分かったら、次は 売上を掛け算の形に分けます。
なぜ掛け算にするのか。 「売上を増やす」と言っただけでは、明日やることが決まらないからです。
分けると、増やせる場所が別々に見えます。
同じ「売上を増やす」でも、3つはまったく別の仕事です。
掛ける数が3つになることもある
サブスクリプション(毎月お金を払い続けて使い続けるしくみ)なら、こうなります。
売上 = 会員数 × 月額 × 続いた月数
「続いた月数」が入るのが、この形の特徴です。 1人が1年続けば、1か月でやめる人の12倍になります。だから、この形の商売は「やめさせないこと」に力を入れます。
みなさんが使っている月額のサービスを思い浮かべてください。やめようとしたときに、引き止められた経験はありませんか。 あれは、この掛け算の3つ目を守るためです。
3つの会社を掛け算にすると
さっきの3社を、この形に当てはめてみます。
- LINEヤフーの広告 … 広告が表示された回数 × 1回あたりの単価
- サンリオのライセンス … 使ってもらった商品の売上 × 使用料の割合
- カバーのライブ … チケットの枚数 × 1枚の値段
自分の企画も、必ずこの形になります。 ならないとしたら、まだ「何に対して」が決まっていません。
ここで迷う人が多い ③ 掛け算に分けられない
うまく分けられなくてもかまいません。 ただ、詰まり方には種類があります。
掛けるものが思いつかない。 「売上 = ? × ?」で止まる場合、たいてい単位が決まっていません。 1回いくらなのか、1人いくらなのか、1個いくらなのか。お金が動く単位を1つ決めてください。 ここが決まれば、掛ける相手は自然に出ます。
掛けても合わない気がする。 「1日10人 × 1,000円 × 300日」と出したものの、そんなに来る気がしない、という場合。その感覚のほうが正しいことが多いです。 ただ、いま直さなくて構いません。第4回で実際に数え、第5回で合わせます。 いまは形を作るところまでです。
分けると小さく見えて、書きたくない。 これもよくあります。小さく出ることは失敗ではありません。 大きく見える数字を書いて第5回で崩れるより、小さくても自分で説明できる数字のほうが、最後まで使えます。
分ける前に、いくらか決めてしまう。 「月に30万円くらい欲しい」から逆算して、人数と単価を作ってしまう場合。逆算そのものは悪くありません。 ただ、そうやって出した人数を、第4回で「本当にそれだけいるか」と数え直してください。 欲しい額から出した数字は、確かめた数字ではありません。
詰まった場所が、その商売のいちばん難しいところです。 覚えておいて、第3回で人に聞くときの材料にしてください。「どこで詰まったか」を書き留めておくと、聞く相手も、聞くことも決まります。
自分の企画で、順番にやってみる
ここまでの2つを、自分の企画に当てはめます。順番があります。
この順番を守ってください。 1から順に書けば、数字には必ず理由が付きます。
1文で書けたら、この回は通っています
最後に、こう書けるかを確かめてください。
わたしの企画は、〇〇な人から、△△に対して、お金を受け取ります。
空欄が埋まらないところがあれば、そこが次に考えるところです。 全部埋まっている必要はありません。
うまく書けないときは
書けないのは、考えていないからではありません。 たいてい、まだ決めていないだけです。
決まっていないときは、仮に1つ置いて、印を付けておいてください。 「たぶんこうだと思うが、確かめていない」と書いておけば、第3回でそこを聞きに行けます。
この授業では、14回かけて何度も書き直します。 いま書いたものが最後まで残ることは、まずありません。書き直した回数のほうが、最後には効いてきます。
最終回で、第1回に書いたものと見比べます。 そのとき「全然違うものになった」と言えるほうが、確かめながら進んだ証拠になります。 いま完成させようとしなくて大丈夫です。
数字を見るときの約束
この回で、いくつも数字を見ました。これから自分で数字を使うときに、1つだけ守ってほしいことがあります。
どこから取った数字かを、一緒に書いてください。
「売上は2兆円」ではなく、「2026年3月期の決算短信で、売上収益は2兆363億6,600万円」。面倒に見えますが、これを書いておくと、あとで自分が助かります。
最終回の発表で、「その数字はどこから取りましたか」と必ず聞かれます。 そのとき答えられるかどうかは、いま書いたかどうかで決まります。 半年前に見たページを思い出すのは、まず無理です。
確かめられなかったことは、確かめられなかったと書いてください。 サンリオのところで見たとおりです。空欄のほうが、想像で埋めた数字より強いです。
もう1つ。いつの数字かを書いてください。 「売上2兆363億6,600万円」ではなく「2026年3月期の売上収益は2兆363億6,600万円」。会社の数字は毎年変わります。去年の数字を今年の話に使うと、それだけで間違いになります。
この2つ——どこから取ったかといつの数字か——は、この先14回ずっと同じことを言い続けます。面倒だと思うのは最初だけです。
次の回までにやること
このページの下に課題が5問あります。Teams から提出してください。締切は次の授業の前日の正午です。
問1が、さっきの「誰が払っているか」です。 授業中に考えたことがあれば、それを書いてください。授業で挙げたものでも、別のものでも構いません。
問4で、自分がやってみたい商売を1文で書きます。 このページの「1文で書けたら、この回は通っています」の形をそのまま使ってください。まだぼんやりしていて大丈夫です。
次の回では答えを持ち寄り、チームと題材を決めます。このページは、そのあとも開きに来てください。 第2回で「価値提案」を書くとき、第4回で数える単位を決めるとき、ここで書いた「誰から・何に対して」に戻ります。
Handouts
Assignment
この課題について
正解が1つに決まる問題ではありません。 調べて書いても、考えて書いてもかまいません。 外れていても構わないので、まずは自分なりの答えを出してみてください。 自分で決めてから解説を読むと、そこがいちばん頭に残ります。 各問に字数の目安を添えてありますが、あくまで目安です。 ぴったり合わせる必要はありません。
- 提出は Teams の課題から
- 締切は 10月1日(木)正午
- 解説は次の回に、Teams でリンクをお知らせします
問1
あなたがふだん無料で使っているサービスを1つ挙げてください。その会社は、誰からお金を受け取っていると思いますか。
そのうえで、その会社はあなたに何をしてほしいと思っているでしょうか。お金を払っていないあなたに、会社が何を期待しているのかを考えてみてください。
目安 150〜250字
問2
LINEヤフー株式会社の売上のうち、広告は約36%で、しかも前の年からほとんど増えていません。 増えているのはPayPayなどの決済のほうです。 もしあなたがLINEヤフーの社長なら、これからどちらに力を入れますか。理由も書いてください。
目安 150〜250字
問3
ホロライブを運営するカバー株式会社は、売上が13.7%伸びたのに営業利益は11.8%減りました。売上が伸びれば利益も伸びる、とは限らないのはなぜだと思いますか。
そのうえで、あなたがやってみたい商売でも同じことが起きるとしたら、どんなときだと思いますか。売れているのに手元に残らない、という場面を想像してみてください。
目安 150〜250字
問4
あなたが今いちばんやってみたい商売は、誰から、何に対してお金を受け取りますか。まず1文で書いてみてください。
そのうえで、その人はいま、それをどうやって済ませていますか。 あなたの商売がまだ無い状態で、その人が同じ用事をどう片づけているかを書いてみてください。
目安 100〜200字
問5
今回の授業で、いちばん分からなかったこと、もやもやしたことを教えてください。 課題の答えではなく、授業の内容についてです。 うまく言葉にできなければ、授業のどのあたりだったかだけでも構いません。
目安 50〜150字
References for this session
2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
Used in Session 1. Licensing revenue alone is not disclosed separately.
2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
Used in Sessions 1 and 2. Revenue and growth by segment come from here.
2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)
Used in Session 1. Growth by business area is broken out here.
ドリルを売るには穴を売れ 誰でも「売れる人」になるマーケティング入門
Half the book is a story about turning a failing restaurant around, covering value, targeting and pricing.
ビジネスモデル2.0図鑑
One hundred business models, each drawn on a single spread. Extends Session 2.