一次情報の探し方
この授業で実際に開いた資料と、そこで分かったことをまとめてあります。数字の出どころを確かめる手順は、仕事に出てからも同じです。制度の記述は2026年9月6日に発行元で確かめました。
会社の数字を、その会社自身の資料で確かめる
ニュース記事の数字は、たいてい会社が出した資料から取られています。記事ではなく、元の資料を開きます。上場している会社なら、どちらも無料で読めます。
- 決算短信
- 決算が固まったらすぐ出る速報です。東京証券取引所は、通期なら決算期末から45日以内(30日以内が望ましい)に出すよう求めています。速報なので、監査が終わるのを待たずに出ます。売上と利益の大きな流れを見るならこれで足ります。
- 有価証券報告書
- 金融商品取引法に基づく正式な書類で、監査を受けたあとに出ます。短信より遅く、そのぶん詳しい。事業の内容、従業員数、主要な取引先、リスクの記述まで載ります。「なぜその数字になったか」を知りたいときはこちらです。
- どこで手に入るか
- 有価証券報告書は金融庁のEDINETに集まっています。決算短信は各社のウェブサイトの「IR」「投資家情報」から辿るのが早い。会社名と「決算短信」で検索すると、その会社の一覧ページに着きます。
- 年度を必ず確かめる
- 「2025年3月期」は、2024年4月から2025年3月までのことです。会社によって決算月が違います。ユニクロを運営するファーストリテイリングは8月期、資生堂は12月期です。年度が1つずれると、比べた意味がなくなります。
- 予想と実績を見分ける
- 決算短信には、その期の実績と、次の期の予想が並んで載っています。予想は会社の見込みで、確かめられた数字ではありません。「〜の見通し」「予想」と書いてあるところは、実績と混ぜて使わないでください。
- 上場していない会社は、分からないことがあります
- 決算を公表する義務の範囲が違うので、売上すら出てこない会社があります。調べても出てこないのは、探し方が悪いからとは限りません。
統計を調べる
国の統計はe-Statに集まっています。市の統計は市のサイトにあります。第4回で人数を数えるときは、この2つから始めます。
- e-Stat から入る
- 省庁がばらばらに出している統計が、1か所に集まっています。表によっては市区町村まで絞れます。第4回で使う「経済センサス‐活動調査」は、産業の小分類ごとの事業所数を、市区町村単位で出せます。
- 市の統計は、市のサイトのほうが速い
- 郡山市は「統計こおりやま」で、地区別・1歳刻みの人口をExcelで公開しています。市内の人数を数えるだけなら、国勢調査まで戻らなくてもここで足ります。
- 最新の調査年を確かめる
- 統計には調査の周期があります。経済センサスは数年に一度です。「最新」と書いてあるページが、いつの調査かは別に見てください。確定値が出るまでに1〜2年かかることもあります。
- 終わっている調査があります
- 経済産業省の「特定サービス産業実態調査」は平成30年(2018年)で終わり、経済構造実態調査に統合されました。それを引用した解説記事はいまも残っています。古い記事から統計名を拾ったら、その統計がまだ続いているかを先に確かめてください。
- 何を数えた数字かを確かめる
- 同じ「化粧品」でも、生産動態統計は国内で作った分だけで、輸入は入りません。輸入も含めた量を知りたいなら、財務省の貿易統計を見ます。数字が違うのではなく、数えている範囲が違います。
「◯◯億円の市場」と書いてある記事の、元をたどる
- 出典の名前を探す
- 記事の末尾か、グラフの隅に、調査の名前が小さく書いてあることが多い。その名前で検索すると、発行元に着きます。名前が書いていない記事の数字は、使わないでおくのが安全です。
- たどり着いた先が有償のこともあります
- ゲーム業界の市場規模は、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)のレポートが元になっています。かつては「ゲーム白書」でしたが、いまは有償のレポートです。元が有償だと分かった時点で、その数字は自分では確かめられません。
確かめられないことがあります
調べても出てこないときの書き方です。これが書けると、調べた人として信用されます。
- 分からないと書く
- 「公開されている情報からは確認できませんでした」と書きます。それらしい数字を置くより正確です。授業でも、サンリオのライセンス事業だけの売上は分けて公表されていないので、そう書きました。
- 自分で数えられないか考える
- 統計に無くても、自分で数えられることがあります。1組が何分いるかは現地で計れます。校内の人数は自分で数えられます。統計より確かなことすらあります。
- 近いものを、近いと断って使う
- 欲しい数字がないとき、範囲の違う数字を代わりに使うことがあります。そのときは何を代わりに使ったかを一緒に書きます。「全国の数字を人口比で割った概算です」と書けば、読む人が自分で判断できます。
- いつ調べたかを書く
- 統計も制度も変わります。「2026年9月時点」と添えるだけで、あとから読む人が確かめ直せます。このページの制度の記述も、すべて2026年9月6日に発行元で確かめたものです。
図書館を使う
本は買わなくても読めます。この授業の参考文献にも、図書館で探す導線を付けてあります。
- 市の図書館に無くても、取り寄せられることがあります
- 郡山市の図書館は、利用カードがあれば予約ができ、他の館にある本を回してもらえます。カードは市内に住んでいる人だけでなく、市内に通学している人も作れます。他の市や県の図書館から取り寄せられるかは、中央図書館が相互貸借の窓口なので、そこで相談します。
- 大学図書館にある本を探す
- 専門書は公共図書館に無くても、大学図書館にあることがあります。CiNii Research の「大学図書館の本をさがす」で、どの大学が持っているかを誰でも無料で調べられます。実際に入って読めるかは大学ごとに違うので、その大学に確かめてください。
- 国立国会図書館のデジタルコレクション
- 絶版などで手に入らない資料を、自宅の端末で読めるしくみがあります(個人向けデジタル化資料送信サービス)。利用登録は満18歳以上で、本人確認書類が要ります。古い統計や、もう売っていない本を探すときに効きます。