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10/5, 10/9

Putting Your Idea on One Page

Lesson content is available in Japanese only.

この回で分かるようになること

この回で覚えるのは2つだけ

新しく覚えることは2つしかありません。

  1. 企画を 9つのマス に分けて1枚に書く
  2. 買う人を 一人の人物 として描く(ペルソナ)

この2つだけです。 マスの名前は9つ出てきますが、名前を覚える必要はありません。 どこに何を書くかは、図を見ながらで構いません。

事例として、ユニクロと LINEヤフーの2社を見ます。

企画は9つのマスに分かれる

前の回で「誰から」「何に対して」お金を受け取るかを分けました。あの2つは、これから使う紙の2マス分にあたります。残りの7マスを足すと、ビジネスの全体が1枚に収まります。

この紙をビジネスモデルキャンバス(9つのマスに分けて1枚に書く様式)といいます。Alexander Osterwalder と Yves Pigneur が『ビジネスモデル・ジェネレーション』で示したものです。

KeyPartnersKeyActivitiesKeyResourcesValuePropositionsCustomerRelationshipsChannelsCustomerSegmentsCost StructureRevenue StreamsLeave a block you could not fill as a dashed box: something to go and find out
The same arrangement as the original: the making side on the left, value in the middle, the delivering side on the right, money along the bottom. On a narrow screen, scroll the figure sideways.

並び方に意味があります。 右が届ける側、左が作る側、その真ん中が価値提案、いちばん下がお金です。この並びは原典のままなので、ほかの資料でキャンバスを見ても同じ形のはずです。

9つを一度に埋めようとしないでください。 5つのまとまりに分けて、順に見ていきます。

  1. 誰に … 右端の顧客セグメント
  2. 何を … 中央の価値提案
  3. どうやって届けるか … 右の顧客との関係とチャネル
  4. どう儲けるか … いちばん下のコスト構造と収益の流れ
  5. そのために何がいるか … 左のパートナー・主要活動・リソース

どのまとまりも、図の上でひと続きの場所にあります。 図と見比べながら進めると、どこを埋めているのかが分かります。

ひとつ、先に断っておきます。「顧客セグメントから書き始める」とよく言われますが、これは原典が決めた順番ではありません。 原典は、顧客セグメントから順に9つのマスを説明しているだけで、書く順番を義務づけてはいません。多くの現場が「まず顧客から」を定石にしているだけです。書きやすいマスから書いて構いません。

なぜ1枚に収めるのか

企画は、話しているうちに長くなります。 「こういう人がいて、こういう困りごとがあって、それで自分たちはこうしたくて」。話し終わったころには、最初に何を言ったか誰も覚えていません。

1枚に収めると、話す順番を変えても中身が変わらなくなります。 聞く人は、気になったマスから見ます。第14回のピッチで、この1枚がそのまま1枚目になります。

もうひとつ。1枚に収めようとすると、書けないところが目に見えます。 頭の中にあるうちは、書けないところも「なんとなく分かっているつもり」で通り過ぎます。マスが空くと、通り過ぎられません。

5つのまとまりで見ると、迷いません

9つを1つずつ覚えるのは大変です。5つのまとまりで見ると、図の上でひと続きの場所になります。

The nine blocks as five, in the order you write themOn the canvas above1For whomThe buyerfar right2WhatWhat they pay forcentre3How it reaches themGetting known, getting boughtright of centre4How money worksWhat comes in and goes outbottom band5What it takesWhat you have, do, and who helpsleft halfThe buyer comes first. Start on the left and the buyer becomes an afterthought
Work through the numbers: the buyer first, what it takes last. The words on the right say where each group sits on the canvas above.

「誰に」が決まらないと、残りのマスも決めにくくなります。 中央の「何を」には、第1回で書いた「何に対して」がそのまま入ります。いちばん下の「どう儲けるか」には、第1回の掛け算が入ります。

ここで迷う人が多い ① マスが埋まらない

自分たちの企画で9マスを埋めようとすると、たいてい、どこかで止まります。 止まり方は3つに分かれます。

顧客セグメントに「みんな」と書いてしまう。 これがいちばん多いと思います。「みんな」と書くと、価値提案も「みんなが便利になること」になり、チャネルも「いろいろな場所」になります。 1マス目がぼやけると、右から左へ全部ぼやけます。いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべて、その人を書いてください。

価値提案に商品名だけを書いて止まってしまう。 「Tシャツ」「写真を撮るサービス」。商品やサービスそのものも価値提案に入りますが、それだけでは、その人にとって何が良くなるのかが見えません。 第1回でやったのと同じです。商品名に加えて、その人が、それを買ったあとに何が変わるかまで書きます。

左側(リソース・主要活動・パートナー)が全部同じになる。 「自分たちの時間」「がんばる」「特にいない」。まだ始めていないので、当たり前です。 空欄のままで構いません。この3つは、第10回で見積りを作るときに埋まります。

3つとも、いま完璧に埋める必要はありません。 この回で埋めるのは、右側の「誰に」「何を」までで十分です。

それでも1マスも書けないときの、いちばん簡単な始め方があります。 自分がこの1か月に買ったもののうち、「これは良かった」と思ったものを1つ選んでください。それを売っている会社のキャンバスを、分かる範囲で埋めてみます。他人の商売のほうが、自分たちの企画より書きやすいです。 1枚書いてから自分たちの企画に戻ると、手が動きます。

「同じような企画が既にある」と思っても、止めないでください。 既にあるということは、そのキャンバスが実際に回っているということです。第6回で、その相手を実際に見に行きます。回っている相手のキャンバスは、埋め方の手本になります。

事例1 ユニクロ — 1つのマスに1つずつ書ける会社

見たことがあるはずのもの

ユニクロの店に入ったことがある人は多いと思います。 服がサイズごとに畳んで積んであって、値札が付いていて、レジに持っていく。店員さんに声をかけられることは、あまりありません。

ヒートテックやエアリズムは、名前を聞いたことがあるはずです。 名前を聞くと、どんな働きの服か想像がつきます。

運営しているのは 株式会社ファーストリテイリング です。ユニクロのほか、GU なども展開しています。

9つのマスに置いてみます

UNIQLO (makes and sells goods)Key PartnersToray Industries(strategicpartnership since2006). Contractfactories inmainland China,Vietnam,Bangladesh,Indonesia andIndiaKey ActivitiesProduct planning,fabricco-development,productioncontrol, stores,output to demandKey ResourcesFabricco-developed withToray. Theworldwide storenetwork. TheLifeWear brandValue PropositionsEveryday clothesyou can wear foryears, in goodfabric (LifeWear)Customer RelationshipsSelf-service instore; the appconnects directlyand returnscustomer voices todesignChannelsStores (794 inJapan, 1,725overseas, Aug2025) and theonline storeCustomer SegmentsPeople buyingeveryday clothes,of any age, genderor countryCost StructureFabric, factory contracts, store rent, logisticsRevenue StreamsPayment for clothes. UNIQLO Japan 1,026.0bn yen /UNIQLO International 1,910.2bn yen (FY Aug 2025)
The ledger entries placed as they are. One item per block. Every figure is FY August 2025 actual, from the earnings release and the integrated report.

顧客セグメントは1つ、収益の流れも1つ。買う人と払う人が同じだからです。

顧客セグメントには「年齢・性別・国を問わず」と書いてあります。ユニクロは、国内外に2,500を超える店を持つ会社です。始めたばかりの企画は、同じ書き方をせずに、いちばん最初に買いそうな1人から書いてみてください。

顧客との関係のマスに注目してください。 「店頭は基本セルフサービス」と書いてあります。売場は、客が自分で選んで、レジまで持っていく形に作られています。

マスに書くと、それが選択だったと分かります。 声をかけないぶん、人の手間が少なくて済みます。代わりに、相談したい人には向きません。 どちらが良いかではなく、選んだということが見えるのが、このマスの値打ちです。

数字を見ます

2025年8月期(決算短信 2025年10月9日)の売上収益は 3兆4,005億3,900万円(前期比9.6%増)。営業利益は 5,642億6,500万円(同12.6%増)でした。

UNIQLO revenue, year to August 2025Japan¥1,026.0bnOverseas¥1,910.2bnWhere you see it is not where its scale sits
Overseas is nearly twice as large. A company you see every day at home is not necessarily centred there.

国内ユニクロ事業の売上が、初めて1兆円を超えた年です。 国内ユニクロ事業は前期比10.1%増、海外ユニクロ事業は同11.6%増でした。

店舗数も、海外のほうが多くなっています。 2025年8月末で、国内794店舗に対して海外1,725店舗です。

パートナーのマスに、名前が書けます

You can put names in the partners blockUNIQLOContracts out most productionTorayDevelops fabric together, from the yarnStrategic partnership since 2006Contract factoriesMainland China, Vietnam, Bangladesh,Indonesia, IndiaBeing able to name them is the evidence you are not doing it alone
It has most of its clothes made elsewhere and is still a clothing maker. Naming who helps you now makes the session 10 estimate quicker.

東レとの戦略的パートナーシップは、統合報告書に書いてあります。ここが大事なところです。 ユニクロは、ほとんどの商品を外の工場に作ってもらっています。それでも、自分たちの服を自分たちで考えて売る会社です。

ここから持ち帰ること

1つ目。 買う人と払う人が同じ商売は、1つのマスに1つずつ書けます。 顧客セグメントが1つなら、価値提案も収益の流れも1つで済みます。

2つ目。 パートナーのマスに名前が書けるかどうかを見てください。 「特にいない」と書きたくなりますが、自分たちだけで全部はできません。 誰に手伝ってもらうかを先に書いておくと、第10回の見積りが早くなります。

3つ目。 見かける場所と、規模の中心は違うことがあります。 国内より海外のほうが大きい。自分たちの企画でも、いちばん売れる場所が最初に思いついた場所とは限りません。

事例2 LINEヤフー — 1つのマスに4つ入る会社

同じ9つのマスに、まったく違う入り方をする会社を置きます。

前の回との違い

LINEヤフー株式会社は、前の回でも見ました。 あのときは「誰から」「何に対して」の2つだけを見ました。今回は同じ会社を9つのマスに広げます。 見える景色が変わります。

LY Corporation (sells in several ways)Key PartnersNewspapers andnews agencies thatsupply the newsKey ActivitiesBuilding andrunning services,planning andselling ads,providing paymentand financeKey ResourcesThe user base(people on LINE,Yahoo! JAPAN andPayPay)Value Propositions1 Free messagingand news 2Reaching thosepeople with ads 3A place to findand buy, both ownstock and others'shops 4 Payingwithout cashCustomer RelationshipsDirectly throughthe apps forusers; LINEofficial accountsand other servicesfor firmsChannelsThe LINE app,Yahoo! JAPAN, thePayPay appCustomer Segments1 People usingLINE or Yahoo!free 2 Firms thatwant to advertise3 People shoppingonline 4 PayPayusers andmerchantsCost StructurePromotion, payroll, depreciation, fees paidRevenue StreamsMedia 735.1bn (mainly from advertisers, plusstickers and paid memberships) / Commerce 857.6bn/ Strategic 445.7bn (payments). FY Mar 2026.Nothing from people using it for free
In the same frame, one block can hold four. Figures are FY March 2026 actual.

顧客セグメントが4つあります

ユニクロは1つでした。LINEヤフーは4つです。

そして、①の、無料の範囲で使っている人からは、お金を受け取っていません。 収益の流れの欄を見てください。メディア、コマース、戦略の3つに分かれていて、無料の範囲で使っている人の分は、どこにも入っていません。 スタンプを買ったり、有料の会員になったりした人は、その分だけ払う側に回ります。

前の回で見た「使う人と払う人は同じとは限らない」が、9つのマスの上ではこう見えます。 ①は顧客セグメントには入るが、収益の流れには入らない。マスが分かれているから、この食い違いが目に見えます。

数字を見ます

内訳は メディア事業7,351億円/コマース事業8,576億円/戦略事業4,457億円(2026年3月期)。

上の3つの数字を足すと2兆384億円になり、会社全体の売上収益2兆363億6,600万円をわずかに超えます。 3つのほかに「その他」が98億円あり、事業どうしのやりとりと全社の費用を差し引く「調整額」がマイナス120億円あるためです。合計が合わない数字を見たら、何が足されて何が引かれた数かを確かめると、たいてい説明がつきます。

前の回では、広告が全体の約28%、広告を含むメディア事業が約36%だと見ました。 メディア事業には、LINEスタンプや LINEマンガのような、広告ではない売上も入っています。今回はもう1つ足します。いちばん大きいのはコマース事業(8,576億円)です。 決算短信の説明では、ネットを通じた商品の販売やサービスの提供をする部分です。ネットで売る場所を貸すだけでなく、ZOZOTOWN やアスクル、旅行の予約も、ここに入ります。

PayPay の連結取扱高は19.3兆円(前年同期比22.9%増)でした。会社全体の売上収益(2兆363億6,600万円)より、はるかに大きい数字です。

ここで気をつけてください。 19.3兆円はPayPay と、そのカード・銀行を通じて動いたお金の合計であって、LINEヤフーの売上ではありません。 売上になるのは、そのうちの手数料などの一部です。この違いは第9回でもう一度扱います。

パートナーは、記事を届けてくれる新聞社や通信社です

Yahoo!ニュースで記事を開くと、配信元の新聞社や通信社の名前が出ています。 記事を書いているのは、その会社です。

LINEヤフーは、記事の多くを自分で書かずに、書いてくれる相手と組んでいます。 その相手がいるから、①の人たちに無料で届ける情報がそろいます。価値提案の①「無料で使える連絡手段と情報」の、情報のほうです。

ここから持ち帰ること

1つ目。 顧客セグメントは複数あってかまいません。 ただし、そのうちどれが払う人かを分けて書いてください。 混ぜると、第4回で誰を数えるかが決まりません。

2つ目。 動いたお金の合計と、自分たちの売上は違います。 19.3兆円と2兆363億6,600万円。桁が違います。 自分たちの企画でも、「扱った金額」と「自分に入る金額」を分けて書いてください。

3つ目。 パートナーは、物を作る相手だけではありません。 ユニクロは素材を一緒に作る東レ、LINEヤフーは記事を届けてくれる新聞社や通信社。自分たちの企画でも、売るものの中身を誰が用意するかを見てください。

2社を並べると、何が見えるか

同じ9つのマスに置いたのに、入り方が違いました。 ユニクロは1つのマスに1つずつ。LINEヤフーは、顧客セグメントに4つ入りました。

この違いは、会社の良し悪しではありません。 商売の形が違うだけです。どちらも、その形で成り立っています。

ユニクロは、物を作って売ります。 買う人と払う人が同じなので、1つのマスに1つずつ入ります。

LINEヤフーは、いくつもの売り方を同時に持っています。 使う人と払う人が分かれるので、顧客セグメントが4つになります。

自分たちの企画は、どちらに近いでしょうか。 物を作って売るなら、ユニクロのように1つずつ書けるはずです。場所を貸したり、間をつないだりするなら、1つのマスに2つ以上入ります。 それ自体が、その商売の性質です。

ここで迷う人が多い ② 空欄が多すぎて不安になる

9マスのうち3つか4つしか埋まらない。 これは普通です。ただ、そのときの反応は3つに分かれます。

空欄を埋めるために、思いつきで書いてしまう。 多い失敗です。埋まっているキャンバスのほうが、できたように見えます。 ところが思いつきで埋めたマスは、第3回で人に聞いた瞬間に崩れます。崩れること自体は構いませんが、どこが思いつきだったか分からなくなります。 思いつきで書いたところには、横に印を付けておきます。 埋まっているかどうかではなく、どのマスを確かめたかで見ます。自分で見たことがあるものには ○、まだ見ていないものには ? を付けてみてください。? が付いたところが、次の回で聞きに行く先になります。

空欄が多いから企画が悪い、と思ってしまう。 始めていない企画なら、空欄が出るのは当たり前です。まだ決めていないだけです。

埋まらないマスを飛ばして、次の回に進んでしまう。 これがいちばんもったいない。空欄はそのまま、第3回で聞くことのリストになります。 「パートナーが空欄だ」と分かっていれば、誰に手伝ってもらえそうかを聞きに行けます。 飛ばすと、聞くことが決まらないまま第3回を迎えます。

9つのマスで、全部が説明できるわけではない

埋め終わると、全部に答えが出たように見えます。 創業者に聞き取りをした調査では、そこが落とし穴だという声が出ています。答えが出たと思わせることで、かえって考えが止まる。 9つの窓だけで自分の事業を説明する、という発想そのものが制約になる、と。

この授業では、埋めたキャンバスを完成品として扱いません。 第3回で外に出て確かめ、第5回で数字を通します。合わなければ組み直します。キャンバスは、いまの見立てを1枚に置いておくための道具です。

9つのマスに入らないものもあります。 たとえば、いつ始めるか。競合が何をしているか。法律で決まっていることがあるか。どれもマスがありません。

入らないから考えなくてよい、ではありません。 競合は第6回で、お金の集め方は第11回で、決め方の規律は第13回で扱います。キャンバスは全部を入れる器ではなく、この14回の最初に置く1枚です。

買う人を、一人の人として描く

顧客セグメントに「若い人」「みんな」と書くと、そこで止まります。全員に向けた商品は、たいてい誰にも刺さりません。

そこで、買ってくれる人を一人の人物として具体的に描きます。これをペルソナといいます。Alan Cooper が『The Inmates Are Running the Asylum』で示した道具で、ビジネスモデルキャンバスとは別のところから来ています。

別のところから来た道具を、なぜ一緒に使うのか。 キャンバスの顧客セグメントは、集まりを書く場所だからです。「20代の女性」「市内の学生」。集まりのままだと、第3回で誰に聞けばよいか決まりません。

一人に落とすと、聞きに行ける相手が決まります。 これがペルソナを併せて使う理由です。キャンバスの1マスを、もう一段細かくする道具だと思ってください。

書くことは1つです。その人の、ある1日を、朝起きたところから書いてみてください。 何時に起きて、どこへ行き、何を買い、どこで手が止まるか。その人がしていることを、時間の順に並べます。

そして、大事なことがひとつあります。いま描くペルソナは仮説です。 話を聞いていない人物は、想像上の人になります。「絶対に買う」と書いてあったら、それは自分の願いを人物に投影しています。

次の回で、実際に人に会って確かめます。 ここで書いたことが違っていたと分かるのが、第3回の成果です。

「誰に」を分ける4つの物差し

一人に落とす前に、顧客セグメントの「誰に」を、どんな物差しで分けているかを見ておきます。同じ「誰に」でも、物差しが違うと、書くことも、確かめに行く先も変わるからです。 人の分け方は、大きく4つに分けられます。

この4つは、フィリップ・コトラーのマーケティングの教科書『Principles of Marketing』が示している分け方です。

よく出てくる書き方を、4つに当てはめてみます。「年齢・性別問わず」は、人口統計的な物差しでは絞らない、と決めた書き方です。「ラーメン好き」は、その商品をどう思っているかなので、行動の物差しです。商品と関係のない好みや価値観なら、心理的な物差しになります。

この回で書くある1日は、行動の物差しをいちばん細かくしたものです。「ラーメン好き」のままでは確かめに行けませんが、「週に何回、誰と、何時ごろ食べに行くか」まで書くと、その人の1日になります。

年齢や「好き」だけでは、確かめに行けません

一人暮らしの学生向けに、夕食の献立を決める手伝いを考えているとします。 同じ買う人を、2通りに書いてみます。

With only these, there is nothing to check19, a student living aloneDoes not much like cookingWants to save moneyLiking is an opinion, and opinions cannot be verifiedWrite one day, and you have something to ask aboutGets up at 7:30 and leaves without breakfastGoes straight to a part-time job after classBuys discounted deli food on the way homeThe test: can you picture what you would ask if you met this person?
The lower block lists what the person does, in order of time. Stop at the upper one and there is nothing to ask.

上の書き方の人に会えたとして、何を聞きますか。

「一人暮らしですか」と聞いても、返ってくるのは「はい」だけです。年齢や、一人暮らしかどうかは、聞けばすぐ分かります。 ただ、分かっても、夕食で困っているかどうかは分かりません。同じ一人暮らしの19歳でも、毎日作る人と、まったく作らない人がいます。

「料理は好きですか」と聞くと、「あまり」と返ってくるかもしれません。好きかどうかは意見です。 あまり好きではないと答えた人が、きのうの夜に総菜を買ったとは限りません。実家から届いたおかずを食べていたかもしれません。聞いても、企画のどこを直せばよいかが出てきません。

「節約したいですか」も同じです。したくないと答える人は、ほとんどいません。 ほぼ全員が「はい」と答える問いからは、買う人と買わない人の違いが見えてきません。

下の書き方なら、聞くことが浮かびます。 きのうは何時に起きましたか。朝ごはんは食べましたか。アルバイトが終わったのは何時でしたか。書いてあるのが、その人のしたことだからです。 したことは、本人に聞けば思い出してもらえます。

ある1日を、朝起きたところから書く

書き方は、この順です。

1. 一人を決める。 顧客セグメントに書いた集まりの中から、いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべます。

2. 朝起きたところから、時間の順に書く。 1行に、していることを1つ。自分たちの企画が関わる時間帯は、少し細かく書きます。

3. 書いた行に ○ と ? を付ける。 自分で見たことがあるものには ○、まだ見ていないものには ? を付けてみてください。

さきほどの献立の企画で、書いてみます。 春から一人暮らしを始めた1年生の、ある平日です。平日と休みの日で1日が大きく違う人なら、企画が関わるほうの日を選びます。 この企画なら、アルバイトのある平日です。休みの日はまとめて作れるので、夕食で手が止まる場面が出にくいからです。

印時刻していること
?7時半起きる。朝ごはんは食べずに家を出る
○9時1限の教室に来る
○12時昼は、学校の近くの店でおにぎりを2つ買う
○16時半授業が終わる。そのままアルバイトへ向かう
?21時アルバイトが終わる
?21時半帰り道のスーパーで、値引きの総菜を買う
?22時部屋で食べる。何にするか考えるのが面倒で、同じものが続く
?24時寝る

○ は3つ、? は5つです。 ○ が付いたのは、教室と昼休みと帰りぎわ。書いた自分たちが、同じ場所にいた時間です。 ? が付いたのは、家にいる時間と、アルバイトのあとです。そこは見ていないので、思ったとおりに書いてあります。

そして、この企画が関わるのは21時半と22時です。 どちらも ? です。総菜を買っているのか、自分で作っているのか、食べずに寝ているのか。ここが違っていたら、企画のほうが変わります。

? のほうが多くても構いません。 まだ始めていない企画なら、見ていない時間のほうが長いことが多いからです。? が付いたところが、次の回で聞きに行く先になります。

書くのは、していることです。 「節約したいと思っている」と書きたくなったら、その人が節約のために何をしているかに直してみてください。「値引きのシールが貼られる時間まで待って買う」。こう書けば、見たことがあるかどうかで ○ か ? が付けられます。「思っている」のままだと、見ようがないので、どちらも付けられません。

? を持って、第3回へ行きます

1日の ? の行は、キャンバスのどこかのマスにつながっています。 上の例で ? が付いた21時半と22時は、価値提案のマス(夕食の献立を決める手伝い)にあたります。7時半の ? は、この企画にはあまり関わりません。

第3回では、? の付いたところから、確かめに行くことを1つ決めます。 上の例なら、聞くのは夜のところです。「きのうの夜、夕食はどうしましたか」。? を付けた行が、そのまま聞くことの下書きになります。

聞いてみると、? は3つのどれかになります。 そのとおりだったので ○ に変わる。違っていた。まだ分からない。どれになっても、聞く前より1つ進んでいます。 違っていたと分かったら、そのとき1日を書き直します。

どれを聞きに行くかは、第3回で決めます。 いまは、? が付いているところまでで足ります。

ここで迷う人が多い ③ ペルソナが自分になる

書いてみると、自分に似た人物ができあがります。 これは誰でもそうなります。止まり方は3つです。

自分の困りごとを、そのまま書いてしまう。 悪いことではありません。自分が困っていることは、実感があるぶん強い出発点です。 ただし、自分ひとりが困っているだけかもしれません。 第3回で他の人にも聞いて、同じ困りごとがあるかを確かめます。

「絶対に買う」と書いてしまう。 これは人物の気持ちではなく、自分の願いです。 書いた本人は気づきません。「絶対に」と書いたところがあれば、そこに ? を付けてみてください。 第3回で最初に確かめる場所になります。

理想の人物を書いてしまう。 お金を持っていて、時間もあって、新しいものが好きで、値段を気にしない。そんな人はいます。ただ、その人が最初の1人になる確率は低いです。 最初の1人は、いま実際に困っていて、しかもすぐ手が届くところにいる人です。

3つとも、いま直す必要はありません。 ? を付けておけば、第3回で聞きに行けます。

ここで迷う人が多い ④ その人の1日が書けない

朝起きたところまでは書けて、そこで手が止まる。 その人の1日を知らないからです。これは普通です。 止まり方は3つです。

朝と夜が書けない。 学校で会う人なら、見ているのは教室にいる時間だけです。家を出る前と、帰ったあとは見ていません。思ったとおりに書いて、? を付けてみてください。 「? たぶん、朝ごはんは食べていない」。知らないところが ? になり、それが第3回で聞く先になります。

全部の行が ? になる。 買う人が、自分たちの身近にいないときに起きます。小学生の子どもがいる親。会社で働いている人。全部が ? でも、書いた意味はあります。 その人の1日のどこを知らないかが、行の数だけ分かったからです。そのうえで、第3回で会いに行ける人がいるかを、チームで一度話してみてください。家族、アルバイト先の人、先輩。1人でも思い浮かべば、その人に聞けます。

企画が関わる場面が、1日の中に出てこない。 朝から夜まで書いたのに、自分たちの商品を使う場面が見当たらない。たとえば、学校の近くで朝のコーヒーを売る企画なのに、書いた1日のどこにもコーヒーを飲む場面が無い。これは見つけものです。 その人は、いま何も飲まずに1限に出ているのかもしれません。「? 何も飲まずに1限に出る」と1行足しておくと、それが次に聞くことになります。

自分たちの企画で、順番にやってみる

ここまでの2つを、自分たちの企画に当てはめます。順番があります。

紙のワークシートでも、キャンバスを書くツールでも書けます。

1. 右端から書く。 顧客セグメント。いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべます。

2. 中央を書く。 価値提案。その人が何を手に入れて、何が良くなるか。第1回で書いた「何に対して」がそのまま入ります。

3. 右側を書く。 チャネルと顧客との関係。どこで知ってもらい、どこで買ってもらうか。

4. いちばん下を書く。 収益の流れ。第1回の掛け算がここに入ります。コスト構造は空欄で構いません。 第10回で埋めます。

5. 左側は、書けるところだけ。 リソース・主要活動・パートナー。空欄でも先に進めます。

6. 右端に書いた人の、ある1日を書く。 朝起きたところから、時間の順に。書いた行に ○ と ? を付けます。

この順番を守ってください。 左から書くと、「自分ができること」から出発して、買う人が後づけになります。買う人が先です。

1枚書けたら、この回は通っています

全部のマスが埋まっている必要はありません。 右端と中央、そしていちばん下の収益の流れ。この3つが書けていれば、次の回に進めます。

逆に、この3つが書けていないと、第3回で聞きに行けません。 誰に聞くかは顧客セグメントから決まり、何を聞くかは価値提案から決まるからです。左側が全部空欄でも進めますが、右端と中央だけは埋めてください。

そのうえで、空欄の横に「これから決める」と書き添えてください。 これが第3回で聞くことのリストになります。

1日のほうは、朝から夜まで行がつながっていて、どの行にも ○ か ? が付いていれば足ります。 行の数は、5行でも10行でも構いません。

うまく書けないときは

書けないのは、考えていないからではありません。 たいてい、まだ決めていないだけです。

1マスも書けないときは、企画のほうを1文にしてみてください。 「◯◯な人が、△△で困っているので、□□を売る」。この1文が書ければ、右端と中央は埋まります。

この授業では、14回かけて何度も書き直します。 最終回で、第2回に書いたキャンバスと見比べます。そのとき「全然違うものになった」と言えるほうが、確かめながら進んだ証拠になります。

次の回までにやること

このページの下に課題が5問あります。Teams から提出してください。締切は次の授業の前日の正午です。

次の回では、誰に何を聞くかを決めて、実際に話を聞きに行きます。

Handouts

Assignment

この課題について

正解が1つに決まる問題ではありません。 調べて書いても、考えて書いてもかまいません。 外れていても構わないので、まずは自分なりの答えを出してみてください。 自分で決めてから解説を読むと、そこがいちばん頭に残ります。 各問に字数の目安を添えてありますが、あくまで目安です。 ぴったり合わせる必要はありません。

  • 提出は Teams の課題から
  • 締切は 10月8日(木)正午
  • 解説は次の回に、Teams でリンクをお知らせします

問1

最近お金を払ってよかったものを1つ教えてください。どんな人に向けて作られていると思いますか。

そのうえで、その「どんな人」に、あなたは当てはまっていますか。 当てはまっていないと思うなら、それでもなぜ買ったのかを書いてみてください。

目安 150〜250字

問2

自分たちのキャンバスの、パートナーのマスを見てください。手伝ってもらえそうな相手の名前を、1つ書いてみてください。 会社でも、お店でも、人でも構いません。書けたら、その相手に何を手伝ってもらうかも添えてください。

名前が書けなかったときは、空欄の横に「これから決める」と書き添えたうえで、決めるために次に何をするかを書いてみてください。

目安 150〜250字

問3

自分たちが書いた、買う人の「ある1日」を見てください。その中から、まだ見ていないので ? を付けた行を1つだけ選んでみてください。

1日をまだ書いていないチームは、先に書いて、○ と ? を付けてから答えてみてください。

そのうえで、選んだ理由と、それが違っていたらキャンバスのどのマスが変わりそうかを書いてみてください。

たとえば「朝、駅のコンビニでコーヒーを買う」と書いたけれど、そうしている人を実際に見たことはない、のように、見たことがあるかどうかで分けると選びやすくなります。

目安 150〜250字

問4

前回までは一人ひとりが企画を考えていました。今回はそれをビジネスモデルキャンバスに書き込み、チームで1つにまとめました。 まとめる前の自分の企画と、いまのチームの企画を比べて、どこが変わりましたか。 変わらなかった場合は、そのままでよいと判断した理由を書いてください。

たとえば「お客さんを『学生』と書いていたけれど、1人に絞ろうとして『昼休みに急いで買う1年生』にした」のように、前はこう思っていた/いまはこう思う、の形にすると書きやすくなります。

目安 100〜200字

問5

今回の授業で、いちばん分からなかったこと、もやもやしたことを教えてください。 課題の答えではなく、授業の内容についてです。 うまく言葉にできなければ、授業のどのあたりだったかだけでも構いません。

目安 50〜150字

Submit through the assignment in Teams.

References for this session

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