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10/5・10/9
企画を1枚にまとめる
この回で分かるようになること
- 自分たちの企画を、9つのマスに分けて1枚に書けるようになる
- 買う人を、年齢や性別だけでなく、ふだんの行動まで含めて書けるようになる
- 埋まらなかったマスがどこかを、自分で言えるようになる
この回で覚えるのは2つだけ
新しく覚えることは2つしかありません。
- 企画を 9つのマス に分けて1枚に書く
- 買う人を 一人の人物 として描く(ペルソナ)
この2つだけです。 マスの名前は9つ出てきますが、名前を覚える必要はありません。 どこに何を書くかは、図を見ながらで構いません。
事例として、ユニクロと LINEヤフーの2社を見ます。
企画は9つのマスに分かれる
前の回で「誰から」「何に対して」お金を受け取るかを分けました。あの2つは、これから使う紙の2マス分にあたります。残りの7マスを足すと、ビジネスの全体が1枚に収まります。
この紙をビジネスモデルキャンバス(9つのマスに分けて1枚に書く様式)といいます。Alexander Osterwalder と Yves Pigneur が『ビジネスモデル・ジェネレーション』で示したものです。
並び方に意味があります。 右が届ける側、左が作る側、その真ん中が価値提案、いちばん下がお金です。この並びは原典のままなので、ほかの資料でキャンバスを見ても同じ形のはずです。
9つを一度に埋めようとしないでください。 5つのまとまりに分けて、順に見ていきます。
- 誰に … 右端の顧客セグメント
- 何を … 中央の価値提案
- どうやって届けるか … 右の顧客との関係とチャネル
- どう儲けるか … いちばん下のコスト構造と収益の流れ
- そのために何がいるか … 左のパートナー・主要活動・リソース
どのまとまりも、図の上でひと続きの場所にあります。 図と見比べながら進めると、どこを埋めているのかが分かります。
ひとつ、先に断っておきます。「顧客セグメントから書き始める」とよく言われますが、これは原典が決めた順番ではありません。 原典は9つのマスをこの順で説明しているだけで、書く順番を義務づけてはいません。多くの現場が「まず顧客から」を定石にしているだけです。書きやすいマスから書いて構いません。
なぜ1枚に収めるのか
企画は、話しているうちに長くなります。 「こういう人がいて、こういう困りごとがあって、それで自分たちはこうしたくて」。話し終わったころには、最初に何を言ったか誰も覚えていません。
1枚に収めると、話す順番を変えても中身が変わらなくなります。 聞く人は、気になったマスから見ます。第14回のピッチで、この1枚がそのまま1枚目になります。
もうひとつ。1枚に収めようとすると、書けないところが目に見えます。 頭の中にあるうちは、書けないところも「なんとなく分かっているつもり」で通り過ぎます。マスが空くと、通り過ぎられません。
5つのまとまりで見ると、迷いません
9つを1つずつ覚えるのは大変です。5つのまとまりで見ると、図の上でひと続きの場所になります。
「誰に」が決まらないと、残り8つが全部決まりません。 中央の「何を」には、第1回で書いた「何に対して」がそのまま入ります。いちばん下の「どう儲けるか」には、第1回の掛け算が入ります。
ここで迷う人が多い ① マスが埋まらない
自分たちの企画で9マスを埋めようとすると、必ずどこかで止まります。 止まり方は3つに分かれます。
顧客セグメントに「みんな」と書いてしまう。 これがいちばん多いと思います。「みんな」と書くと、価値提案も「みんなが便利になること」になり、チャネルも「いろいろな場所」になります。 1マス目がぼやけると、右から左へ全部ぼやけます。いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべて、その人を書いてください。
価値提案に商品名を書いてしまう。 「Tシャツ」「写真を撮るサービス」。それは「何を売るか」であって「何と引き換えにお金が動くか」ではありません。 第1回でやったのと同じです。その人が、それを買ったあとに何が変わるかを書きます。
左側(リソース・主要活動・パートナー)が全部同じになる。 「自分たちの時間」「がんばる」「特にいない」。まだ始めていないので、当たり前です。 空欄のままで構いません。この3つは、第10回で見積りを作るときに埋まります。
3つとも、いま完璧に埋める必要はありません。 この回で埋めるのは、右側の「誰に」「何を」までで十分です。
それでも1マスも書けないときの、いちばん簡単な始め方があります。 自分がこの1か月に買ったもののうち、「これは良かった」と思ったものを1つ選んでください。それを売っている会社のキャンバスを、分かる範囲で埋めてみます。他人の商売のほうが、自分たちの企画より書きやすいです。 1枚書いてから自分たちの企画に戻ると、手が動きます。
「同じような企画が既にある」と思っても、止めないでください。 既にあるということは、そのキャンバスが実際に回っているということです。第6回で、その相手を実際に見に行きます。回っている相手のキャンバスは、埋め方の手本になります。
事例1 ユニクロ — 1つのマスに1つずつ書ける会社
まず、埋まり方がいちばん素直な会社から見ます。
見たことがあるはずのもの
ユニクロの店に入ったことがある人は多いと思います。 服がサイズごとに畳んで積んであって、値札が付いていて、レジに持っていく。店員さんに声をかけられることは、あまりありません。
ヒートテックやエアリズムは、名前を聞いたことがあるはずです。 どちらも「あたたかい」「乾きやすい」という機能の名前がそのまま商品名になっています。
運営しているのは 株式会社ファーストリテイリング です。ユニクロのほか、GU なども展開しています。
9つのマスに置いてみます
| マス | ユニクロ(ファーストリテイリング) |
|---|---|
| 顧客セグメント | 年齢・性別・国を問わず、ふだん着を買う人 |
| 価値提案 | 上質な素材と機能で、長く着られるふだん着(LifeWear) |
| チャネル | 直営店(2025年8月末で国内794・海外1,725)とオンラインストア |
| 顧客との関係 | 店頭は基本セルフサービス。アプリで直接つながり、声を商品づくりに返す |
| 収益の流れ | 服の販売代金。国内1兆260億円/海外1兆9,102億円(2025年8月期) |
| リソース | 東レなどとの共同開発による素材。世界の店舗網。LifeWear のブランド |
| 主要活動 | 商品の企画、素材の共同開発、生産管理、店舗運営、生産量の調整 |
| パートナー | 東レ株式会社(2006年に戦略的パートナーシップ)。中国大陸・ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・インドの委託工場 |
| コスト構造 | 空欄 |
8つのマスが、1つずつ具体的に埋まりました。 顧客セグメントは1つ、収益の流れも1つ。買う人と払う人が同じだからです。
顧客との関係のマスに注目してください。 「店頭は基本セルフサービス」と書いてあります。店員さんに声をかけられないのは、手が回っていないからではなく、そう決めているからです。
マスに書くと、それが選択だったと分かります。 声をかけないぶん、人件費が下がり、値段が下がる。代わりに、相談したい人には向きません。 どちらが良いかではなく、選んだということが見えるのが、このマスの値打ちです。
数字を見ます
2025年8月期(決算短信 2025年10月9日)の売上収益は 3兆4,005億3,900万円(前期比9.6%増)。営業利益は 5,642億6,500万円(同12.6%増)でした。
国内が初めて1兆円を突破した年です。 国内ユニクロ事業は前期比10.1%増、海外ユニクロ事業は同11.6%増でした。
店舗数も、海外のほうが多くなっています。 2025年8月末で、国内794店舗に対して海外1,725店舗です。
パートナーのマスに、名前が書けます
東レとの戦略的パートナーシップは、統合報告書に書いてあります。ここが大事なところです。 ユニクロは工場を持っていません。それでも「服を作る会社」として通っています。
ここから持ち帰ること
1つ目。 買う人と払う人が同じ商売は、マスが素直に埋まります。 顧客セグメントが1つなら、価値提案も収益の流れも1つで済みます。
2つ目。 パートナーのマスに名前が書けるかどうかを見てください。 「特にいない」と書きたくなりますが、自分たちだけで全部はできません。 誰に手伝ってもらうかを先に書いておくと、第10回の見積りが早くなります。
3つ目。 見かける場所と、規模の中心は違うことがあります。 国内より海外のほうが大きい。自分たちの企画でも、いちばん売れる場所が最初に思いついた場所とは限りません。
事例2 LINEヤフー — 1つのマスに4つ入る会社
同じ9つのマスに、まったく違う埋まり方をする会社を置きます。
前の回との違い
LINEヤフー株式会社は、前の回でも見ました。 あのときは「誰から」「何に対して」の2つだけを見ました。今回は同じ会社を9つのマスに広げます。 見える景色が変わります。
| マス | LINEヤフー |
|---|---|
| 顧客セグメント | ①無料で使う人 ②広告を出したい企業 ③ネットで売りたい中小企業・個人 ④PayPay を使う人と加盟店 |
| 価値提案 | ①無料で使える連絡手段と情報 ②その人たちに広告を届けられること ③自分で店を持たずに売れること ④現金を持たずに払えること |
| チャネル | LINE アプリ、Yahoo! JAPAN、PayPay アプリ |
| 顧客との関係 | 使う人とはアプリで直接。企業には LINE 公式アカウントなどの法人向けサービス |
| 収益の流れ | メディア7,351億円/コマース8,576億円/戦略4,457億円(2026年3月期)。使う人からは受け取らない |
| リソース | 空欄 |
| 主要活動 | サービスの開発・運営、広告商品の企画・販売・掲載、決済金融サービスの提供 |
| パートナー | 空欄 |
| コスト構造 | 空欄 |
顧客セグメントが4つあります
ユニクロは1つでした。LINEヤフーは4つです。
そして、①の「無料で使う人」からは、お金を受け取っていません。 収益の流れの欄を見てください。メディア、コマース、戦略の3つに分かれていて、①はどこにも入っていません。
前の回で見た「使う人と払う人は同じとは限らない」が、9つのマスの上ではこう見えます。 ①は顧客セグメントには入るが、収益の流れには入らない。マスが分かれているから、この食い違いが目に見えます。
数字を見ます
内訳は メディア事業7,351億円/コマース事業8,576億円/戦略事業4,457億円(2026年3月期)。
この3つを足すと2兆384億円になり、会社全体の売上収益2兆363億6,600万円をわずかに超えます。 3つのほかに「その他」が98億円あり、事業どうしのやりとりと全社の費用を差し引く「調整額」がマイナス120億円あるためです。合計が合わない数字を見たら、何が足されて何が引かれた数かを確かめると、たいてい説明がつきます。
前の回では「広告が全体の約36%」まで見ました。 今回はもう1つ足します。いちばん大きいのはコマース事業(8,576億円)です。 ネットで物を売る場所を貸す部分です。
PayPay の連結取扱高は19.3兆円(前年同期比22.9%増)でした。会社全体の売上収益(2兆363億6,600万円)より、はるかに大きい数字です。
ここで気をつけてください。 19.3兆円はPayPayを通じて動いたお金の合計であって、LINEヤフーの売上ではありません。 売上になるのは、そのうちの手数料の部分だけです。この違いは第9回でもう一度扱います。
3つのマスが空欄です
リソース、パートナー、コスト構造の3つが空欄になりました。 埋め忘れではありません。開いて探して、それでも出てこなかったところです。
ここから持ち帰ること
1つ目。 顧客セグメントは複数あってかまいません。 ただし、そのうちどれが払う人かを分けて書いてください。 混ぜると、第4回で誰を数えるかが決まりません。
2つ目。 動いたお金の合計と、自分たちの売上は違います。 19.3兆円と2兆363億6,600万円。桁が違います。 自分たちの企画でも、「扱った金額」と「自分に入る金額」を分けて書いてください。
3つ目。 大きい会社ほど埋まる、わけではありません。 ユニクロは8マス埋まり、LINEヤフーは6マスでした。会社の大きさと、外から分かることの多さは別です。
2社を並べると、何が見えるか
同じ9つのマスに置いたのに、埋まり方が違いました。
この違いは、会社の良し悪しではありません。 商売の形が違うだけです。埋まったマスの数で企画を比べないでください。 どちらも、その形で成り立っています。
自分のキャンバスに空欄が多くても、同じです。 空欄は「まだ分かっていない場所」を指しているだけで、企画の点数ではありません。
ユニクロは、物を作って売ります。 作る相手も、売る場所も、外から見えます。だからマスが埋まります。
LINEヤフーは、場所を貸します。 誰と組んでいるか、何にいくらかかっているかは、外からは見えません。だからマスが空きます。
自分たちの企画は、どちらに近いでしょうか。 物を作って売るなら、ユニクロのように具体的に書けるはずです。場所を貸したり、間をつないだりするなら、書きにくいマスが出ます。 書きにくいこと自体が、その商売の性質です。
もうひとつ、共通していることがあります
2社とも、コスト構造が空欄でした。
決算短信は、原価と販売費の合計は出します。ところが、素材にいくら、工場にいくら、店の賃料にいくらという内訳は出しません。これはどちらの会社も同じでした。
外から見て、いちばん分からないのがここです。 何にいくらかかっているかは、会社の中の話だからです。
逆に言えば、自分たちの企画では、ここが自分にしか分からない部分になります。 第10回で見積りを作るとき、外の会社の数字は参考になりません。 自分で1つずつ足すことになります。
空欄のマスは、次に調べること
上の表に空欄が4つあります。埋め忘れではありません。公開されている資料を開いて、それでも確認できなかったところです。
- ユニクロのコスト構造 … 決算短信は原価と販管費の合計を出しますが、素材費・工場への委託費・店舗の賃料・物流費といった内訳は公表されていません
- LINEヤフーのリソース … 決算短信は「利用者数を重視している」と書いていますが、その数字自体は載せていません
- LINEヤフーのパートナー … 取引先や提携先の記述がありません
- LINEヤフーのコスト構造 … ユニクロと同じです
みなさんのキャンバスにも空欄が出ます。空欄は失敗ではなく、次に調べることの発見です。 ただし、これは原典に書いてある一文ではありません。同じ著者たちの後の本や、実務の現場が積み上げてきた考え方です。それでも、この科目ではこの立場を採ります。全部埋まっているキャンバスのほうが、想像で埋めた疑いが強いからです。
空欄には、2種類あります
この2つを分けてください。 見た目は同じ空欄でも、次にやることが違います。
上の4つは、前者です。 決算短信を開いて、それでも載っていなかった。第1回のサンリオでやったのと同じです。探す場所を増やせば見つかることもあります。
ここで迷う人が多い ② 空欄が多すぎて不安になる
9マスのうち3つか4つしか埋まらない。 これは普通です。ただ、そのときの反応は3つに分かれます。
空欄を埋めるために、思いつきで書いてしまう。 いちばん多い失敗です。埋まっているキャンバスのほうが、できたように見えます。 ところが思いつきで埋めたマスは、第3回で人に聞いた瞬間に崩れます。崩れること自体は構いませんが、どこが思いつきだったか分からなくなります。 思いつきで書くなら、その横に印を付けてください。
空欄が多いから企画が悪い、と思ってしまう。 上で見たとおり、LINEヤフーも6マスしか埋まりませんでした。 大きい会社でも空欄は出ます。始めていない企画なら、なおさら出ます。
埋まらないマスを飛ばして、次の回に進んでしまう。 これがいちばんもったいない。空欄はそのまま、第3回で聞くことのリストになります。 「パートナーが空欄だ」と分かっていれば、誰に手伝ってもらえそうかを聞きに行けます。 飛ばすと、聞くことが決まらないまま第3回を迎えます。
9つのマスで、全部が説明できるわけではない
埋め終わると、全部に答えが出たように見えます。 創業者に聞き取りをした調査では、そこが落とし穴だという声が出ています。答えが出たと思わせることで、かえって考えが止まる。 9つの窓だけで自分の事業を説明する、という発想そのものが制約になる、と。
この授業では、埋めたキャンバスを完成品として扱いません。 第3回で外に出て確かめ、第5回で数字を通します。合わなければ組み直します。キャンバスは、いまの見立てを1枚に置いておくための道具です。
9つのマスに入らないものもあります。 たとえば、いつ始めるか。競合が何をしているか。法律で決まっていることがあるか。どれもマスがありません。
入らないから考えなくてよい、ではありません。 競合は第6回で、お金の集め方は第11回で、決め方の規律は第13回で扱います。キャンバスは全部を入れる器ではなく、この14回の最初に置く1枚です。
買う人を、一人の人として描く
顧客セグメントに「若い人」「みんな」と書くと、そこで止まります。全員に向けた商品は、たいてい誰にも刺さりません。
そこで、買ってくれる人を一人の人物として具体的に描きます。これをペルソナといいます。Alan Cooper が『The Inmates Are Running the Asylum』で示した道具で、ビジネスモデルキャンバスとは別のところから来ています。
別のところから来た道具を、なぜ一緒に使うのか。 キャンバスの顧客セグメントは、集まりを書く場所だからです。「20代の女性」「市内の学生」。集まりのままだと、第3回で誰に聞けばよいか決まりません。
一人に落とすと、聞きに行ける相手が決まります。 これがペルソナを併せて使う理由です。キャンバスの1マスを、もう一段細かくする道具だと思ってください。
年齢と性別だけでは足りません。その人がふだん何をしていて、いま何に困っていて、それをいまどうやってしのいでいるかまで書きます。
そして、大事なことがひとつあります。いま描くペルソナは仮説です。 話を聞いていない人物は、想像上の人になります。「絶対に買う」と書いてあったら、それは自分の願いを人物に投影しています。
次の回で、実際に人に会って確かめます。 ここで書いたことが違っていたと分かるのが、第3回の成果です。
何を書けば、確かめに行けるか
年齢と性別だけ書いても、確かめようがありません。 「20歳、女性」と書いて、次の回で何を聞きに行きますか。
確かめられるのは、行動と困りごとです。 意見は聞いても確かめられません。第3回で扱うのはここです。
ここで迷う人が多い ③ ペルソナが自分になる
書いてみると、自分に似た人物ができあがります。 これは誰でもそうなります。止まり方は3つです。
自分の困りごとを、そのまま書いてしまう。 悪いことではありません。自分が困っていることは、実感があるぶん強い出発点です。 ただし、自分ひとりが困っているだけかもしれません。 第3回で他の人にも聞いて、同じ困りごとがあるかを確かめます。
「絶対に買う」と書いてしまう。 これは人物の気持ちではなく、自分の願いです。 書いた本人は気づきません。「絶対に」と書いたところがあれば、そこに印を付けてください。 第3回で最初に確かめる場所になります。
理想の人物を書いてしまう。 お金を持っていて、時間もあって、新しいものが好きで、値段を気にしない。そんな人はいます。ただ、その人が最初の1人になる確率は低いです。 最初の1人は、いま実際に困っていて、しかもすぐ手が届くところにいる人です。
3つとも、いま直す必要はありません。 印を付けておけば、第3回で全部確かめられます。
自分たちの企画で、順番にやってみる
ここまでの2つを、自分たちの企画に当てはめます。順番があります。
1. 右端から書く。 顧客セグメント。いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべます。
2. 中央を書く。 価値提案。その人が何と引き換えにお金を払うか。第1回で書いた「何に対して」がそのまま入ります。
3. 右側を書く。 チャネルと顧客との関係。どこで知ってもらい、どこで買ってもらうか。
4. いちばん下を書く。 収益の流れ。第1回の掛け算がここに入ります。コスト構造は空欄で構いません。 第10回で埋めます。
5. 左側は、書けるところだけ。 リソース・主要活動・パートナー。空欄でも先に進めます。
この順番を守ってください。 左から書くと、「自分ができること」から出発して、買う人が後づけになります。買う人が先です。
1枚書けたら、この回は通っています
全部のマスが埋まっている必要はありません。 右端と中央、そしていちばん下の収益の流れ。この3つが書けていれば、次の回に進めます。
逆に、この3つが書けていないと、第3回で聞きに行けません。 誰に聞くかは顧客セグメントから決まり、何を聞くかは価値提案から決まるからです。左側が全部空欄でも進めますが、右端と中央だけは埋めてください。
そのうえで、空欄の横に「調べたが無かった」か「まだ決めていない」かを書いてください。 これが第3回で聞くことのリストになります。
うまく書けないときは
書けないのは、考えていないからではありません。 たいてい、まだ決めていないだけです。
1マスも書けないときは、企画のほうを1文にしてみてください。 「◯◯な人が、△△で困っているので、□□を売る」。この1文が書ければ、右端と中央は埋まります。
この授業では、14回かけて何度も書き直します。 最終回で、第2回に書いたキャンバスと見比べます。そのとき「全然違うものになった」と言えるほうが、確かめながら進んだ証拠になります。
次の回までにやること
このページの下に課題が5問あります。Teams から提出してください。締切は次の授業の前日の正午です。
次の回では、誰に何を聞くかを決めて、実際に話を聞きに行きます。
配布資料
課題
この課題について
正解が1つに決まる問題ではありません。 調べて書いても、考えて書いてもかまいません。 外れていても構わないので、まずは自分なりの答えを出してみてください。 自分で決めてから解説を読むと、そこがいちばん頭に残ります。 各問に字数の目安を添えてありますが、あくまで目安です。 ぴったり合わせる必要はありません。
- 提出は Teams の課題から
- 締切は 10月8日(木)正午
- 解説は次の回に、Teams でリンクをお知らせします
問1
最近お金を払ってよかったものを1つ教えてください。どんな人に向けて作られていると思いますか。
そのうえで、その「どんな人」に、あなたは当てはまっていますか。 当てはまっていないと思うなら、それでもなぜ買ったのかを書いてみてください。
目安 150〜250字
問2
ユニクロは、東レ株式会社と2006年に戦略的パートナーシップを結び、素材を糸から共同で開発しています。生産は中国大陸・ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・インドの工場に委託しています。
自分たちで工場を持たず、素材も他社と組んで作る。それでも「パートナー」のマスに書けることが強みになるのはなぜだと思いますか。
目安 150〜250字
問3
LINEヤフー株式会社の9つのマスのうち、リソース・パートナー・コスト構造の3つは、公開されている資料からは埋められませんでした。 一方、ユニクロは埋められなかったのがコスト構造だけです。
同じように大きい会社なのに、この差はどこから来ると思いますか。
目安 150〜250字
問4
今回わかったことを踏まえて、自分たちの企画はどこが変わりましたか。 変わらなかった場合は、そのままでよいと判断した理由を書いてください。
たとえば「お金を払う人は使う人だと思っていたけれど、別の人かもしれないと気づいた」のように、前はこう思っていた/いまはこう思う、の形にすると書きやすくなります。
目安 100〜200字
問5
今回の授業で、いちばん分からなかったこと、もやもやしたことを教えてください。 課題の答えではなく、授業の内容についてです。 うまく言葉にできなければ、授業のどのあたりだったかだけでも構いません。
目安 50〜150字
この回の参考文献
2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
第1回と第2回で使いました。事業ごとの売上と伸び方はここに載っています。
2025年8月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
第2回の記入例(ユニクロ)の数字はここから取りました。
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書
第2回の9つのマスは、この本のものです。日本語で読めます。
Business Model Generation: A Handbook for Visionaries, Game Changers, and Challengers
上の日本語版の原書です。9つのマスの定義はここが元になっています。
The Inmates Are Running the Asylum
ペルソナはこの本から来ています。9つのマスとは別の道具です。
Value Proposition Design
「埋まらないマスは、次に調べることの発見」という見方は、この系統の本が整理したものです。
Using business model tools in entrepreneurial start-ups: insights and inconsistencies
第2回で使いました。キャンバスが「答えが出た」と思わせて考えを止めることがある、という創業者の声が出てきます。本文は趣旨として書いてあり、原文をそのまま引いてはいません。
ビジネスモデル2.0図鑑
第2回で描いた9マスの、実例が100件。1件が見開き1枚の図なので、気になるところから開けます。