はじめてのマネジメント第2回

02

10/5・10/9

企画を1枚にまとめる

この回で分かるようになること

この回で覚えるのは2つだけ

新しく覚えることは2つしかありません。

  1. 企画を 9つのマス に分けて1枚に書く
  2. 買う人を 一人の人物 として描く(ペルソナ)

この2つだけです。 マスの名前は9つ出てきますが、名前を覚える必要はありません。 どこに何を書くかは、図を見ながらで構いません。

事例として、ユニクロと LINEヤフーの2社を見ます。

企画は9つのマスに分かれる

前の回で「誰から」「何に対して」お金を受け取るかを分けました。あの2つは、これから使う紙の2マス分にあたります。残りの7マスを足すと、ビジネスの全体が1枚に収まります。

この紙をビジネスモデルキャンバス(9つのマスに分けて1枚に書く様式)といいます。Alexander Osterwalder と Yves Pigneur が『ビジネスモデル・ジェネレーション』で示したものです。

パートナー主要活動リソース価値提案顧客との関係チャネル顧客セグメントコスト構造収益の流れ埋まらなかったマスは点線にしておく。次に調べることの印
原典と同じ並びです。左が作る側、中央が価値、右が届ける側、いちばん下がお金。狭い画面では、図を横に動かして見てください。

並び方に意味があります。 右が届ける側、左が作る側、その真ん中が価値提案、いちばん下がお金です。この並びは原典のままなので、ほかの資料でキャンバスを見ても同じ形のはずです。

9つを一度に埋めようとしないでください。 5つのまとまりに分けて、順に見ていきます。

  1. 誰に … 右端の顧客セグメント
  2. 何を … 中央の価値提案
  3. どうやって届けるか … 右の顧客との関係とチャネル
  4. どう儲けるか … いちばん下のコスト構造と収益の流れ
  5. そのために何がいるか … 左のパートナー・主要活動・リソース

どのまとまりも、図の上でひと続きの場所にあります。 図と見比べながら進めると、どこを埋めているのかが分かります。

ひとつ、先に断っておきます。「顧客セグメントから書き始める」とよく言われますが、これは原典が決めた順番ではありません。 原典は9つのマスをこの順で説明しているだけで、書く順番を義務づけてはいません。多くの現場が「まず顧客から」を定石にしているだけです。書きやすいマスから書いて構いません。

なぜ1枚に収めるのか

企画は、話しているうちに長くなります。 「こういう人がいて、こういう困りごとがあって、それで自分たちはこうしたくて」。話し終わったころには、最初に何を言ったか誰も覚えていません。

1枚に収めると、話す順番を変えても中身が変わらなくなります。 聞く人は、気になったマスから見ます。第14回のピッチで、この1枚がそのまま1枚目になります。

もうひとつ。1枚に収めようとすると、書けないところが目に見えます。 頭の中にあるうちは、書けないところも「なんとなく分かっているつもり」で通り過ぎます。マスが空くと、通り過ぎられません。

5つのまとまりで見ると、迷いません

9つを1つずつ覚えるのは大変です。5つのまとまりで見ると、図の上でひと続きの場所になります。

9つのマスを、書く順に5つで見ます上の9マスの図では1誰に買う人右端2何を何と引き換えに払うか中央3どうやって届けるか知ってもらう・買ってもらう中央の右4どう儲けるか入るお金と出ていくお金いちばん下5そのために何がいるか持っているもの・やること・組む相手左半分買う人が先です。左から書くと、買う人が後づけになります
番号の順に書きます。買う人が先で、そのために何がいるかは最後です。右の言葉は、すぐ上の9マスの図のどこに当たるかです。

「誰に」が決まらないと、残り8つが全部決まりません。 中央の「何を」には、第1回で書いた「何に対して」がそのまま入ります。いちばん下の「どう儲けるか」には、第1回の掛け算が入ります。

ここで迷う人が多い ① マスが埋まらない

自分たちの企画で9マスを埋めようとすると、必ずどこかで止まります。 止まり方は3つに分かれます。

顧客セグメントに「みんな」と書いてしまう。 これがいちばん多いと思います。「みんな」と書くと、価値提案も「みんなが便利になること」になり、チャネルも「いろいろな場所」になります。 1マス目がぼやけると、右から左へ全部ぼやけます。いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべて、その人を書いてください。

価値提案に商品名を書いてしまう。 「Tシャツ」「写真を撮るサービス」。それは「何を売るか」であって「何と引き換えにお金が動くか」ではありません。 第1回でやったのと同じです。その人が、それを買ったあとに何が変わるかを書きます。

左側(リソース・主要活動・パートナー)が全部同じになる。 「自分たちの時間」「がんばる」「特にいない」。まだ始めていないので、当たり前です。 空欄のままで構いません。この3つは、第10回で見積りを作るときに埋まります。

3つとも、いま完璧に埋める必要はありません。 この回で埋めるのは、右側の「誰に」「何を」までで十分です。

それでも1マスも書けないときの、いちばん簡単な始め方があります。 自分がこの1か月に買ったもののうち、「これは良かった」と思ったものを1つ選んでください。それを売っている会社のキャンバスを、分かる範囲で埋めてみます。他人の商売のほうが、自分たちの企画より書きやすいです。 1枚書いてから自分たちの企画に戻ると、手が動きます。

「同じような企画が既にある」と思っても、止めないでください。 既にあるということは、そのキャンバスが実際に回っているということです。第6回で、その相手を実際に見に行きます。回っている相手のキャンバスは、埋め方の手本になります。

事例1 ユニクロ — 1つのマスに1つずつ書ける会社

まず、埋まり方がいちばん素直な会社から見ます。

見たことがあるはずのもの

ユニクロの店に入ったことがある人は多いと思います。 服がサイズごとに畳んで積んであって、値札が付いていて、レジに持っていく。店員さんに声をかけられることは、あまりありません。

ヒートテックやエアリズムは、名前を聞いたことがあるはずです。 どちらも「あたたかい」「乾きやすい」という機能の名前がそのまま商品名になっています。

運営しているのは 株式会社ファーストリテイリング です。ユニクロのほか、GU なども展開しています。

9つのマスに置いてみます

マスユニクロ(ファーストリテイリング)
顧客セグメント年齢・性別・国を問わず、ふだん着を買う人
価値提案上質な素材と機能で、長く着られるふだん着(LifeWear)
チャネル直営店(2025年8月末で国内794・海外1,725)とオンラインストア
顧客との関係店頭は基本セルフサービス。アプリで直接つながり、声を商品づくりに返す
収益の流れ服の販売代金。国内1兆260億円/海外1兆9,102億円(2025年8月期)
リソース東レなどとの共同開発による素材。世界の店舗網。LifeWear のブランド
主要活動商品の企画、素材の共同開発、生産管理、店舗運営、生産量の調整
パートナー東レ株式会社(2006年に戦略的パートナーシップ)。中国大陸・ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・インドの委託工場
コスト構造空欄

8つのマスが、1つずつ具体的に埋まりました。 顧客セグメントは1つ、収益の流れも1つ。買う人と払う人が同じだからです。

顧客との関係のマスに注目してください。 「店頭は基本セルフサービス」と書いてあります。店員さんに声をかけられないのは、手が回っていないからではなく、そう決めているからです。

マスに書くと、それが選択だったと分かります。 声をかけないぶん、人件費が下がり、値段が下がる。代わりに、相談したい人には向きません。 どちらが良いかではなく、選んだということが見えるのが、このマスの値打ちです。

数字を見ます

2025年8月期(決算短信 2025年10月9日)の売上収益は 3兆4,005億3,900万円(前期比9.6%増)。営業利益は 5,642億6,500万円(同12.6%増)でした。

ユニクロ 2025年8月期の売上収益国内1兆260億円海外1兆9,102億円見かける場所と、規模の中心は違うことがあります
海外のほうが2倍近く大きくなっています。日本で見かける会社だから日本が中心だ、とは限りません。

国内が初めて1兆円を突破した年です。 国内ユニクロ事業は前期比10.1%増、海外ユニクロ事業は同11.6%増でした。

店舗数も、海外のほうが多くなっています。 2025年8月末で、国内794店舗に対して海外1,725店舗です。

パートナーのマスに、名前が書けます

パートナーのマスに、名前が書けますユニクロ自社の工場を持たない東レ素材を糸から一緒に開発2006年から戦略的パートナーシップ委託先の工場中国大陸・ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・インド名前が書けることが、自分たちだけでやっていない証拠になります
工場を持っていなくても、服を作る会社として通っています。誰に手伝ってもらうかを先に書いておくと、第10回の見積りが早くなります。

東レとの戦略的パートナーシップは、統合報告書に書いてあります。ここが大事なところです。 ユニクロは工場を持っていません。それでも「服を作る会社」として通っています。

ここから持ち帰ること

1つ目。 買う人と払う人が同じ商売は、マスが素直に埋まります。 顧客セグメントが1つなら、価値提案も収益の流れも1つで済みます。

2つ目。 パートナーのマスに名前が書けるかどうかを見てください。 「特にいない」と書きたくなりますが、自分たちだけで全部はできません。 誰に手伝ってもらうかを先に書いておくと、第10回の見積りが早くなります。

3つ目。 見かける場所と、規模の中心は違うことがあります。 国内より海外のほうが大きい。自分たちの企画でも、いちばん売れる場所が最初に思いついた場所とは限りません。

事例2 LINEヤフー — 1つのマスに4つ入る会社

同じ9つのマスに、まったく違う埋まり方をする会社を置きます。

前の回との違い

LINEヤフー株式会社は、前の回でも見ました。 あのときは「誰から」「何に対して」の2つだけを見ました。今回は同じ会社を9つのマスに広げます。 見える景色が変わります。

マスLINEヤフー
顧客セグメント①無料で使う人 ②広告を出したい企業 ③ネットで売りたい中小企業・個人 ④PayPay を使う人と加盟店
価値提案①無料で使える連絡手段と情報 ②その人たちに広告を届けられること ③自分で店を持たずに売れること ④現金を持たずに払えること
チャネルLINE アプリ、Yahoo! JAPAN、PayPay アプリ
顧客との関係使う人とはアプリで直接。企業には LINE 公式アカウントなどの法人向けサービス
収益の流れメディア7,351億円/コマース8,576億円/戦略4,457億円(2026年3月期)。使う人からは受け取らない
リソース空欄
主要活動サービスの開発・運営、広告商品の企画・販売・掲載、決済金融サービスの提供
パートナー空欄
コスト構造空欄

顧客セグメントが4つあります

ユニクロは1つでした。LINEヤフーは4つです。

そして、①の「無料で使う人」からは、お金を受け取っていません。 収益の流れの欄を見てください。メディア、コマース、戦略の3つに分かれていて、①はどこにも入っていません。

前の回で見た「使う人と払う人は同じとは限らない」が、9つのマスの上ではこう見えます。 ①は顧客セグメントには入るが、収益の流れには入らない。マスが分かれているから、この食い違いが目に見えます。

数字を見ます

内訳は メディア事業7,351億円/コマース事業8,576億円/戦略事業4,457億円(2026年3月期)。

この3つを足すと2兆384億円になり、会社全体の売上収益2兆363億6,600万円をわずかに超えます。 3つのほかに「その他」が98億円あり、事業どうしのやりとりと全社の費用を差し引く「調整額」がマイナス120億円あるためです。合計が合わない数字を見たら、何が足されて何が引かれた数かを確かめると、たいてい説明がつきます。

前の回では「広告が全体の約36%」まで見ました。 今回はもう1つ足します。いちばん大きいのはコマース事業(8,576億円)です。 ネットで物を売る場所を貸す部分です。

PayPay の連結取扱高は19.3兆円(前年同期比22.9%増)でした。会社全体の売上収益(2兆363億6,600万円)より、はるかに大きい数字です。

ここで気をつけてください。 19.3兆円はPayPayを通じて動いたお金の合計であって、LINEヤフーの売上ではありません。 売上になるのは、そのうちの手数料の部分だけです。この違いは第9回でもう一度扱います。

3つのマスが空欄です

リソース、パートナー、コスト構造の3つが空欄になりました。 埋め忘れではありません。開いて探して、それでも出てこなかったところです。

ここから持ち帰ること

1つ目。 顧客セグメントは複数あってかまいません。 ただし、そのうちどれが払う人かを分けて書いてください。 混ぜると、第4回で誰を数えるかが決まりません。

2つ目。 動いたお金の合計と、自分たちの売上は違います。 19.3兆円と2兆363億6,600万円。桁が違います。 自分たちの企画でも、「扱った金額」と「自分に入る金額」を分けて書いてください。

3つ目。 大きい会社ほど埋まる、わけではありません。 ユニクロは8マス埋まり、LINEヤフーは6マスでした。会社の大きさと、外から分かることの多さは別です。

2社を並べると、何が見えるか

同じ9つのマスに置いたのに、埋まり方が違いました。

ユニクロ(物を作って売る)埋まったマス8LINEヤフー(場所を貸す)埋まったマス6外から書ける公表されていないマスの数は、外から分かることの多さです。うまくいっているかどうかではありません
塗ってあるのが、公開資料から書けたマスです。点線は、資料を開いても載っていなかったところです。形が同じでも、外から見えるところが違います。

この違いは、会社の良し悪しではありません。 商売の形が違うだけです。埋まったマスの数で企画を比べないでください。 どちらも、その形で成り立っています。

自分のキャンバスに空欄が多くても、同じです。 空欄は「まだ分かっていない場所」を指しているだけで、企画の点数ではありません。

ユニクロは、物を作って売ります。 作る相手も、売る場所も、外から見えます。だからマスが埋まります。

LINEヤフーは、場所を貸します。 誰と組んでいるか、何にいくらかかっているかは、外からは見えません。だからマスが空きます。

自分たちの企画は、どちらに近いでしょうか。 物を作って売るなら、ユニクロのように具体的に書けるはずです。場所を貸したり、間をつないだりするなら、書きにくいマスが出ます。 書きにくいこと自体が、その商売の性質です。

もうひとつ、共通していることがあります

2社とも、コスト構造が空欄でした。

決算短信は、原価と販売費の合計は出します。ところが、素材にいくら、工場にいくら、店の賃料にいくらという内訳は出しません。これはどちらの会社も同じでした。

外から見て、いちばん分からないのがここです。 何にいくらかかっているかは、会社の中の話だからです。

逆に言えば、自分たちの企画では、ここが自分にしか分からない部分になります。 第10回で見積りを作るとき、外の会社の数字は参考になりません。 自分で1つずつ足すことになります。

空欄のマスは、次に調べること

上の表に空欄が4つあります。埋め忘れではありません。公開されている資料を開いて、それでも確認できなかったところです。

みなさんのキャンバスにも空欄が出ます。空欄は失敗ではなく、次に調べることの発見です。 ただし、これは原典に書いてある一文ではありません。同じ著者たちの後の本や、実務の現場が積み上げてきた考え方です。それでも、この科目ではこの立場を採ります。全部埋まっているキャンバスのほうが、想像で埋めた疑いが強いからです。

空欄には、2種類あります

この2つを分けてください。 見た目は同じ空欄でも、次にやることが違います。

同じ空欄でも、次にやることが逆です空欄探したが、公表されていなかった「調べたが公表されていない」と書き添える→ 別の資料を探すまだ決めていない「これから決める」と書き添える→ 自分で決める空欄の横に、どちらかを書いておいてください
みなさんのキャンバスに出るのは、たいてい下のほうです。どちらかを書き添えておくと、次に何をすればよいかが自分で分かります。

上の4つは、前者です。 決算短信を開いて、それでも載っていなかった。第1回のサンリオでやったのと同じです。探す場所を増やせば見つかることもあります。

ここで迷う人が多い ② 空欄が多すぎて不安になる

9マスのうち3つか4つしか埋まらない。 これは普通です。ただ、そのときの反応は3つに分かれます。

空欄を埋めるために、思いつきで書いてしまう。 いちばん多い失敗です。埋まっているキャンバスのほうが、できたように見えます。 ところが思いつきで埋めたマスは、第3回で人に聞いた瞬間に崩れます。崩れること自体は構いませんが、どこが思いつきだったか分からなくなります。 思いつきで書くなら、その横に印を付けてください。

空欄が多いから企画が悪い、と思ってしまう。 上で見たとおり、LINEヤフーも6マスしか埋まりませんでした。 大きい会社でも空欄は出ます。始めていない企画なら、なおさら出ます。

埋まらないマスを飛ばして、次の回に進んでしまう。 これがいちばんもったいない。空欄はそのまま、第3回で聞くことのリストになります。 「パートナーが空欄だ」と分かっていれば、誰に手伝ってもらえそうかを聞きに行けます。 飛ばすと、聞くことが決まらないまま第3回を迎えます。

9つのマスで、全部が説明できるわけではない

埋め終わると、全部に答えが出たように見えます。 創業者に聞き取りをした調査では、そこが落とし穴だという声が出ています。答えが出たと思わせることで、かえって考えが止まる。 9つの窓だけで自分の事業を説明する、という発想そのものが制約になる、と。

この授業では、埋めたキャンバスを完成品として扱いません。 第3回で外に出て確かめ、第5回で数字を通します。合わなければ組み直します。キャンバスは、いまの見立てを1枚に置いておくための道具です。

9つのマスに入らないものもあります。 たとえば、いつ始めるか。競合が何をしているか。法律で決まっていることがあるか。どれもマスがありません。

入らないから考えなくてよい、ではありません。 競合は第6回で、お金の集め方は第11回で、決め方の規律は第13回で扱います。キャンバスは全部を入れる器ではなく、この14回の最初に置く1枚です。

買う人を、一人の人として描く

顧客セグメントに「若い人」「みんな」と書くと、そこで止まります。全員に向けた商品は、たいてい誰にも刺さりません。

そこで、買ってくれる人を一人の人物として具体的に描きます。これをペルソナといいます。Alan Cooper が『The Inmates Are Running the Asylum』で示した道具で、ビジネスモデルキャンバスとは別のところから来ています。

別のところから来た道具を、なぜ一緒に使うのか。 キャンバスの顧客セグメントは、集まりを書く場所だからです。「20代の女性」「市内の学生」。集まりのままだと、第3回で誰に聞けばよいか決まりません。

一人に落とすと、聞きに行ける相手が決まります。 これがペルソナを併せて使う理由です。キャンバスの1マスを、もう一段細かくする道具だと思ってください。

年齢と性別だけでは足りません。その人がふだん何をしていて、いま何に困っていて、それをいまどうやってしのいでいるかまで書きます。

そして、大事なことがひとつあります。いま描くペルソナは仮説です。 話を聞いていない人物は、想像上の人になります。「絶対に買う」と書いてあったら、それは自分の願いを人物に投影しています。

次の回で、実際に人に会って確かめます。 ここで書いたことが違っていたと分かるのが、第3回の成果です。

何を書けば、確かめに行けるか

年齢と性別だけ書いても、確かめようがありません。 「20歳、女性」と書いて、次の回で何を聞きに行きますか。

これだけだと、確かめに行けません20歳、女性かわいいものが好き節約したいと思っている好きかどうかは意見です。意見は聞いても確かめられませんこれが書けていれば、聞きに行けますふだん何をしているか平日の夕方はどこにいるか。休みの日に何にお金を使うかいまどう済ませているか自分でやるか、店に行くか、我慢するか何に困っているかお金か、時間か、手間か、恥ずかしさか確かめ方 …「この人に会えるとしたら、何を聞くか」が浮かぶかどうか
下の3つが書けていれば、第3回で聞くことが決まります。上だけで止まっていると、会いに行っても何を聞けばよいか分かりません。

確かめられるのは、行動と困りごとです。 意見は聞いても確かめられません。第3回で扱うのはここです。

ここで迷う人が多い ③ ペルソナが自分になる

書いてみると、自分に似た人物ができあがります。 これは誰でもそうなります。止まり方は3つです。

自分の困りごとを、そのまま書いてしまう。 悪いことではありません。自分が困っていることは、実感があるぶん強い出発点です。 ただし、自分ひとりが困っているだけかもしれません。 第3回で他の人にも聞いて、同じ困りごとがあるかを確かめます。

「絶対に買う」と書いてしまう。 これは人物の気持ちではなく、自分の願いです。 書いた本人は気づきません。「絶対に」と書いたところがあれば、そこに印を付けてください。 第3回で最初に確かめる場所になります。

理想の人物を書いてしまう。 お金を持っていて、時間もあって、新しいものが好きで、値段を気にしない。そんな人はいます。ただ、その人が最初の1人になる確率は低いです。 最初の1人は、いま実際に困っていて、しかもすぐ手が届くところにいる人です。

3つとも、いま直す必要はありません。 印を付けておけば、第3回で全部確かめられます。

自分たちの企画で、順番にやってみる

ここまでの2つを、自分たちの企画に当てはめます。順番があります。

1. 右端から書く。 顧客セグメント。いちばん最初に買いそうな1人を思い浮かべます。

2. 中央を書く。 価値提案。その人が何と引き換えにお金を払うか。第1回で書いた「何に対して」がそのまま入ります。

3. 右側を書く。 チャネルと顧客との関係。どこで知ってもらい、どこで買ってもらうか。

4. いちばん下を書く。 収益の流れ。第1回の掛け算がここに入ります。コスト構造は空欄で構いません。 第10回で埋めます。

5. 左側は、書けるところだけ。 リソース・主要活動・パートナー。空欄でも先に進めます。

この順番を守ってください。 左から書くと、「自分ができること」から出発して、買う人が後づけになります。買う人が先です。

1枚書けたら、この回は通っています

全部のマスが埋まっている必要はありません。 右端と中央、そしていちばん下の収益の流れ。この3つが書けていれば、次の回に進めます。

逆に、この3つが書けていないと、第3回で聞きに行けません。 誰に聞くかは顧客セグメントから決まり、何を聞くかは価値提案から決まるからです。左側が全部空欄でも進めますが、右端と中央だけは埋めてください。

そのうえで、空欄の横に「調べたが無かった」か「まだ決めていない」かを書いてください。 これが第3回で聞くことのリストになります。

うまく書けないときは

書けないのは、考えていないからではありません。 たいてい、まだ決めていないだけです。

1マスも書けないときは、企画のほうを1文にしてみてください。 「◯◯な人が、△△で困っているので、□□を売る」。この1文が書ければ、右端と中央は埋まります。

この授業では、14回かけて何度も書き直します。 最終回で、第2回に書いたキャンバスと見比べます。そのとき「全然違うものになった」と言えるほうが、確かめながら進んだ証拠になります。

次の回までにやること

このページの下に課題が5問あります。Teams から提出してください。締切は次の授業の前日の正午です。

次の回では、誰に何を聞くかを決めて、実際に話を聞きに行きます。

配布資料

課題

この課題について

正解が1つに決まる問題ではありません。 調べて書いても、考えて書いてもかまいません。 外れていても構わないので、まずは自分なりの答えを出してみてください。 自分で決めてから解説を読むと、そこがいちばん頭に残ります。 各問に字数の目安を添えてありますが、あくまで目安です。 ぴったり合わせる必要はありません。

  • 提出は Teams の課題から
  • 締切は 10月8日(木)正午
  • 解説は次の回に、Teams でリンクをお知らせします

問1

最近お金を払ってよかったものを1つ教えてください。どんな人に向けて作られていると思いますか。

そのうえで、その「どんな人」に、あなたは当てはまっていますか。 当てはまっていないと思うなら、それでもなぜ買ったのかを書いてみてください。

目安 150〜250字

問2

ユニクロは、東レ株式会社と2006年に戦略的パートナーシップを結び、素材を糸から共同で開発しています。生産は中国大陸・ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・インドの工場に委託しています。

自分たちで工場を持たず、素材も他社と組んで作る。それでも「パートナー」のマスに書けることが強みになるのはなぜだと思いますか。

目安 150〜250字

問3

LINEヤフー株式会社の9つのマスのうち、リソース・パートナー・コスト構造の3つは、公開されている資料からは埋められませんでした。 一方、ユニクロは埋められなかったのがコスト構造だけです。

同じように大きい会社なのに、この差はどこから来ると思いますか。

目安 150〜250字

問4

今回わかったことを踏まえて、自分たちの企画はどこが変わりましたか。 変わらなかった場合は、そのままでよいと判断した理由を書いてください。

たとえば「お金を払う人は使う人だと思っていたけれど、別の人かもしれないと気づいた」のように、前はこう思っていた/いまはこう思う、の形にすると書きやすくなります。

目安 100〜200字

問5

今回の授業で、いちばん分からなかったこと、もやもやしたことを教えてください。 課題の答えではなく、授業の内容についてです。 うまく言葉にできなければ、授業のどのあたりだったかだけでも構いません。

目安 50〜150字

Teams の課題から提出してください。

この回の参考文献

参考文献の一覧

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