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Supplementary, Date to be decided
Why Do We Work?
この回で分かるようになること
- 自分のアルバイトや目指している仕事が、誰を楽にしているかを図に描ける
- 同じ仕事が、誰かに負担をかけることもあると気づける
- 自分が働く理由を、2つ以上の見方で説明できる
先に、3つの問いに答えてみてください
授業のはじめに、次の3つに答えます。それぞれ「そう思う」「そう思わない」「どちらとも言えない」から1つ選んで、理由を1行書いてみてください。
- 社会に出るということは、誰かに影響を与えるということか
- 働くということは、はた(自分のまわりの人)を楽にすることか
- つまり、働くということは、よい影響を与えることか
この3つには、正解を用意していません。 講師も答えを言いません。
授業の最後に、同じ3つにもう一度答えます。 最初の答えは、消さずに残しておいてください。答えが変わっても、変わらなくても構いません。変わったなら、何がきっかけだったかを書けます。変わらなかったなら、なぜ変わらなかったかを書けます。どちらも、この回で手に入るものです。
何のために働くか
次の中から、自分に近いものを2つまで選んでみてください。アルバイトをしていない人は、これから働くとしたら、で構いません。
- 収入を得るため
- 仕事を通して達成感や生きがいを得るため
- 自分の能力を発揮するため
- 働くのがあたりまえだから
- 人の役に立つため
- 社会的な地位を得るため
- 親やきょうだいを養うため
- その他
選んだら、次を読んでください。
内閣府が2017年に、全国の16歳から29歳の1万人に、同じことを聞いています。選択肢も、上の8つと同じです。2つまで選ぶ形です。いちばん多かったのは収入を得るためで、84.6%でした。 人の役に立つためは13.6%です。2つまで選べるので、足すと100%を超えます。(内閣府『平成30年版 子供・若者白書』の特集。2017年の調査)
収入のために働くのは、多くの人に共通する、まっとうな答えです。 暮らしが立たなければ、ほかの理由で働き続けることもできません。
本編でも、同じことを見てきました。事業は、稼がないと続きません。 人も同じです。
この回は、収入という答えを出発点にします。そのうえで、収入のほかに、働くことに何がついてくるかを見ていきます。
「はたを楽にする」は、言葉の由来ではない
「働く」は「はた(傍)を楽にする」から来ている、という話を聞いたことがあるかもしれません。入口の2つ目の問いも、この話から作っています。
国語辞典で「働く」を引くと、もとは、からだを動かすことを指す言葉だったと書かれています。そこから、精を出して仕事をする、という意味が生まれました。中世になって、この意味を書き表すために、「人」と「動」を組み合わせた「働」という字が日本で作られた、とも書かれています。(小学館『精選版 日本国語大辞典』の「働く」。コトバンクで読めます)
「はたを楽にする」から来た、という説明は、辞典には載っていません。 辞典に載っていない以上、言葉の由来とは言えません。音を使った語呂合わせ(音が似ていることを使った言葉遊び)として受け取っておくのがよさそうです。
ただ、同じ辞典には、こんな使い方も載っています。 他人のためにがんばる、人のために走り回る、という意味の「働く」です。江戸時代、1711年の小説に出てくる使い方です。
つまり、「働く」が「誰かのために動く」意味で使われてきたことは、辞典で確かめられます。由来ではないけれど、言いたいことには根拠がある。語呂合わせではあっても、仕事の形をよく表しています。
仕事の多くは、誰かの手間や困りごとを引き受けて、その代わりにお金を受け取っています。 「はたを楽にする」は、その形をうまく言い当てています。
働く意味は、1つではない
働く理由を、大きく3つに分けてみます。
- 生計を立てる。 自分や家族の暮らしを支える
- 誰かの役に立つ。 お客さんや、一緒に働く人を楽にする
- 自分が育つ。 できることが増える、任されることが増える
3つとも、働く理由になります。 どれか1つが正しい、ということはありません。
多くの場合、3つは混ざっています。 たとえばコンビニのアルバイトなら、学費のために入った人が、朝に急いでいるお客さんのレジを早く打てるようになって、それが少しうれしい。発注を任されて、売れ筋が分かるようになる。1つの仕事の中に、3つとも入っています。
重なり方は、人によって違います。同じ店で同じ時間に働いていても、ある人は生計がほとんどで、ある人は育つほうが大きい。同じ人でも、時期によって変わることがあります。 入ったばかりのころと2年目とでは、違うかもしれません。
最初に選んだ2つを見返してみてください。3つのうち、どれが入っていて、どれが入っていないか。 入っていないものが、悪いわけではありません。いまの自分の重なり方が分かれば十分です。
お店と同じ形をしている
本編の第2回で、ビジネスモデルキャンバス(事業の要点を9つのマスに書く表)を書きました。その中に、次の3つのマスがありました。
- 顧客セグメント:誰のための事業か
- 価値提案:その人の、何を楽にするか
- 収益の流れ:何に対して、お金を受け取るか
お店は、お客さんの困りごとを片づけて、その代わりに売上を得ています。 9つのマスは、その形を書くための表でした。
働く人も、同じ形をしています。 誰かの手間を引き受けて、その代わりに給料を受け取る。給料を払っているのはお店ですが、そのお金は、多くの場合、もとをたどるとお客さんが払ったものです。
だから、自分の仕事についても、同じ3つが書けます。誰を楽にしているか、何を楽にしているか、何に対してお金を受け取っているか。 次のワークでは、このうち「誰を」を図にします。
ワーク(1):その仕事が明日なくなったら
いまのアルバイトを1つ選んでください。アルバイトをしていない人は、目指している仕事で構いません。どちらも思い浮かばなければ、家族の仕事や、よく行くお店の店員さんの仕事でも構いません。
問いは1つです。その仕事が明日なくなったら、誰がどう困るか。
紙の裏に、同心円(真ん中が同じで、大きさの違う輪を重ねた図)があります。
- 真ん中:自分の仕事
- 内側の輪:その仕事が直接助けている人
- 外側の輪:その先で、間接に助かっている人
たとえば、お店のホールのアルバイトなら、こう書けます。
- 内側:食べに来たお客さん、同じ時間に厨房に入っている人
- 外側:そのお客さんの家族(その日は夕飯を作らずに済んだ)、お店に食材を納めている人
外側の輪は、すぐには出てこないかもしれません。 内側に書いた人が、そのあと誰と会うかを考えると、出てくることが多いです。
ワーク(2):負担をかけうる人も書き足す
紙の裏の「負担をかけうる人」の欄に、その仕事が負担をかけうる人を書き足してみてください。
仕事は、誰かを楽にすると同時に、別の誰かに負担をかけることがあります。たとえば、夜遅くまで開けているお店は、近所の人にとっては音や明かりが気になるかもしれません。人が足りない日は、同じ時間に入っている人に仕事が寄ります。
自分自身も入れてください。 遅い時間まで働いた次の日の授業、睡眠、体。働いている本人も、負担を受ける側にいます。
書けなくても、空いたままでも構いません。 共有のときに、ほかの人の図を見て思いついたら、書き足してください。よい影響だけを見ていると、同じ仕事が誰かの負担になっていることに気づきにくくなります。両方を同じ紙に書いておくと、あとで比べられます。
ワーク(3):「お客様の笑顔のため」に残る人
次の話は、架空の人の話です。3〜4人で話してみてください。
あるお店で働く、入社2年目のAさん。閉店のあと、残業代の出ない時間まで残って、片づけと翌日の準備、お店のSNSの投稿を続けています。本人は「お客様の笑顔のためなら」と言っています。店長も「Aさんがいて助かる」と言っています。
話し合うのは2つです。
- この働き方を10年続けたら、Aさんとお店に、どんなことが起きそうか
- どうすれば、Aさんはよい影響を与え続けられるか
考えるときは、3つの方向から見てみてください。Aさんの体と暮らし、お店のほかの人、お客さん。
Aさんがえらいか、悪いか、で決めなくて構いません。Aさんがお客さんを楽にしていることは本当です。そのうえで、それを10年続けられる形になっているかを考えます。
ワーク(4):自分を守るために知っておくこと
よい影響を与え続けるには、働く本人が続けられることが前提になります。そのための決まりが、法律にあります。
アルバイトも、法律の上では労働者です。 労働基準法は、職業の種類を問わず、雇われて賃金を受け取っている人を労働者としています。
働かせてよい時間には上限があります。 休憩を除いて、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはいけない、と決められています(労働基準法 第32条)。
時間を延ばして働かせる場合には、割増した賃金を払わなければなりません(同 第37条)。延ばすこと自体にも手続きが要りますが、ここでは、延ばした時間は割増して払われる、ということだけ覚えておけば足ります。
困ったときに相談できる場所があります。 都道府県の労働局や労働基準監督署などに、総合労働相談コーナーがあります。学生や就活生の相談も受けていて、予約は要らず、無料です。面談か電話で相談できます。(厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」)
働くときの決まりについての厚生労働省の資料は、労働法教育の案内ページにまとめられています。
ワーク(3)のAさんの話に戻ってみてください。この節を読む前と後で、話し合ったことに足したいことはありますか。
共有:1人1分で図を紹介する
ワーク(1)(2)で描いた図を、1人1分で紹介します。選んだ仕事と、いちばん外側に書いた人、負担の欄に書いた人を話してみてください。聞く人は、自分の図に足せそうなものがあれば、メモしておきます。ほかの人の図を見て思いついたことは、自分の紙に書き足して構いません。
振り返り:最初の3つの問いに、もう一度答える
授業のはじめに答えた3つの問いに、もう一度答えてみてください。紙の表の「授業後」の列です。
- 社会に出るということは、誰かに影響を与えるということか
- 働くということは、はた(自分のまわりの人)を楽にすることか
- つまり、働くということは、よい影響を与えることか
そのうえで、紙の裏の欄に、変わったことと、その理由を書いてみてください。
書き方に迷ったら、「前は◯◯と思っていた/いまは◯◯と思う」の形にすると書きやすくなります。変わらなかった人は、変わらなかった理由を書いてみてください。 それも、この回で考えた結果です。
この回に、提出するものはありません。 紙は自分の手元に残しておいてください。最終回の資料を作るときや、就職の面接で働く理由を聞かれたときに、自分が一度考えたことを見返せます。
「事業はなぜ稼ぐのか」はこちら
なぜ稼ぐのか。事業はなぜ稼ぐのかを考える回です。この回は、その主語を自分に置きかえた回です。
Handouts
References for this session
平成30年版 子供・若者白書(特集 就労等に関する若者の意識)
Used in Supplementary 4. A 2017 survey of 10,000 people aged 16–29 on why they work (up to two answers); earning an income was by far the most common (84.6%). The link is the National Diet Library's archived copy.
精選版 日本国語大辞典「働く」
Used in Supplementary 4. The entry's note on how 'hataraku' originally meant moving the body and later came to mean labour, and the sense of working for others (example from 1711).
労働基準法(第9条・第32条・第37条)
Used in Supplementary 4. Part-timers count as workers (Art. 9), the 8-hour day and 40-hour week (Art. 32), and premium pay for extended hours (Art. 37).
総合労働相談コーナーのご案内
Used in Supplementary 4. Where to ask for help with workplace problems; students and job seekers can consult free, without an appointment.
『働くこと』と『労働法』~大学・短大・高専・専門学校生等に教えるための手引き~
Introduced in Supplementary 4. A guide for teaching working rules and labour law to students.